日本政府は、中国が東シナ海で進めている天然ガス田の開発状況を示す、写真や地図などの資料を公開した。これまでに分かっていた海上の掘削施設(プラットフォーム)4基以外に、日中中間線近くに、新たに12基が造られており、そのうち5基はこの1年の間に増設されたという。23日付各紙が報じた。

新たに造られた12基について、ジャーナリストの櫻井よしこ氏は7月6日付の産経新聞コラムで指摘していた。これを受ける形で、菅義偉官房長官は同日の会見で、新たなプラットフォームの存在を認めたものの、「外交交渉に支障をきたす」として詳細は公開しなかった(23日付東京新聞)。

こんなにも大事なことを、なぜこれまで公開してこなかったのか。また、「外交交渉」とは具体的に何を指すのか。

安倍晋三首相は8月、「戦後70年談話」を出す予定だが、その内容は中国や韓国に配慮し、「河野・村山談話」を踏襲すると見られている。また、9月3日の中国の「抗日戦争勝利記念日」前後に、訪中する可能性も報じられている。

これらの状況を踏まえると、一連の情報を公開しなかった理由は、安倍首相が訪中までに中国との間で「波風」を立たせたくなかったから、と勘繰られても仕方がないだろう。

そもそも、中国のガス田開発の問題は、「地下でつながっている日本側のガス資源を中国に抜き取られる可能性がある」という資源の問題だけではない。プラットフォームの多くにヘリポートが併設されており、「ヘリや無人機の展開拠点として利用する可能性もある」(中谷元防衛相)。

また櫻井氏が指摘するように、プラットフォーム同士を合体させてレーダーサイトを造れば、中国が一方的に主張する防空識別圏の範囲をカバーできるようになり、日本や在日米軍にとって脅威になる。さらに、中国軍事評論家の平松茂雄氏は、このプラットフォームにミサイル発射基地を造ることもできると指摘している。

こうしたことを考えれば、中国のガス田施設は、ほぼ「軍事施設」と考えた方がいい。

であるならば、この事実を知りながら、国民に公開してこなかった安倍政権には、一定の疑念が生じる。歴史問題が一層注目を浴びる戦後70年の今夏、中国の習近平・国家主席と仲良くすることを優先させ、先の大戦で命をかけて国を守ろうとした300万人もの戦死者とその遺族を悲しませるようなことだけはしてほしくない。(居)

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