中学生向け教科書の採択に際し、複数の教科書会社が教員に過度な営業活動を行っている。この問題について、教科書会社40社でつくる「教科書協会」が調査を始めた。10日付読売新聞が報じた。

教師の自宅にも営業

公立小中学校の教科書は市町村の教育委員会が中心となって7~8月頃に採択する。その調査員の約8割は教員。そのため、教科書会社は教員に対して営業を行っている。

その中では、独占禁止法に基づく特殊指定により金銭を伴う営業活動が禁じられており、採択の公正確保が図られてきた。通常は、授業の合間などに資料を渡す程度だった。

しかし記事によると、ある教科書会社は同紙取材に対し、営業職員が教員の自宅を訪ねて教科書の宣伝活動を行ったことを認めているという。こうした活動が過剰なのではないかと問題視されている。

国民の声が教科書採択に影響

ここで忘れてはならないのは、教科書を国民の声で選ぶという観点だ。

文部科学省は一般市民に教科書を公開して、その意見を参考にすることを教育委員会に提案している。例えば2011年には、保守的な内容が多い育鵬社や自由社の教科書を推す区民の声が多かった東京都大田区で、育鵬社が採択された。こうした意見が実際の採択に影響を及ぼしているとみられる。

今年は、6月から7月初旬までの間、各都道府県の教科書センターなどで検定教科書が公開され、意見を集める。

それに先立ち8日付日本共産党広報紙「赤旗」は、育鵬社の教科書を「歴史の事実をゆがめる」と評して、大田区で開かれた「新しい中学校検定教科書を考えるつどい」を紹介。つどいでは、育鵬社の教科書を批判しつつ「教科書展示会で意見を書こう」と呼びかけたという。

一方、6日に開かれた教科書展示会を見学した男性(60代)は、弊誌の取材に対してこう語った。

「学校卒業後に歴史を学び直して、自虐的な歴史観を入れ替えた経験があります。また、古事記のような『日本人が紡いできた日本の歴史観』を正当に評価することも大切だと思うので、私は育鵬社の教科書を採択してほしい。子供たちには、日本に誇りを持てる教育を受けてほしいと思います」

「18歳選挙権」に向け正しい教科書を

公立小中学校の教科書採択は4年に1回行われており、今年は来年度以降に使用される中学の教科書を採択する年に当たる。今回採択された教科書を学ぶ子供たちは、18歳から投票権を得る世代になる見込みだ。

彼らがどのような教科書で学ぶかは、日本の次の世代に大きな影響を及ぼすことになる。教科書会社の営業努力ではなく、その内容に対する1人ひとりの意見が、教科書の採択を決めるべきだ。(居)

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