首相官邸の屋上に、小型無人機(ドローン)が落下していたことが22日、判明した。大きさは50センチほどで、カメラを搭載していたという。安倍晋三首相は外遊中のため不在だったが、ドローンの侵入に気づけないという、警備体制の問題が内外にさらされた。23日付各紙が報じた。

ドローンとは無人で空を飛ぶ装置。手元のコントローラーで操縦するものと、GPSを利用してプログラムに従って飛ぶものなどがある。日本でもカメラを載せて空撮するなどの目的で、一台数万円程度のものが数万台ほど使われている。海外では、顧客の元に商品を届けるなどの商業利用が進んでおり、2023年までに世界での市場規模は10兆円に上る見込みだ。

普及が進む中、重要な施設にドローンが侵入する事件は、海外でも起きている。アメリカでは1月、酔ったシークレットサービスが飛ばしたドローンが、ホワイトハウスの敷地内に墜落した。フランスでは昨年10月以降、不審なドローンが原子力発電所や原子力潜水艦の基地上空などを飛ぶ事件が続き、カンボジアでは王宮上空をカメラ付きドローンが飛行する事件が起きた。

ドローンはラジコンヘリに似ているが、ラジコンよりも遠隔地から飛ばせ、プログラムによっても飛ばすことができるため、テロ行為に使用された場合に犯人を特定しにくい。今回、もしドローンに爆発物などの危険物が搭載されていたらと思うとゾッとするが、日本には現在、ドローンについて特別な規制はなく、ラジコンと同じような扱いだという。空港周辺では飛行が禁止されているものの、皇居や官邸であっても、高度200メートル以下であればドローンを飛ばしても法的責任は問われず、取り締まることも出来ない。

アメリカでは、ホワイトハウスを含むワシントン中心部などは飛行禁止地区となっており、民間機の離着陸と高度5400メートル以下の飛行が禁じられている。こうした地域は地上レーダーや、ミサイル防衛センサー網などが監視しており、許可なく飛んでいるものについては、戦闘機や沿岸警備ヘリ、地対空ミサイルなどが対応する。

皇居や官邸をはじめ、原子力発電所などの重要な施設に、ドローンが易々と近づける状態はおかしい。日本ではドローン規制が検討され始めた矢先だが、法整備とともに防衛体制の強化が急がれる。警視庁だけでは不十分なら、自衛隊と協力することも検討すべきだ。(居)

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