サウジアラビア率いる中東諸国連合が、アラビア半島の南部に位置するイエメンのフーシ派武装集団に対する空爆を始めた。連合軍には、サウジアラビア、トルコ、エジプト、アラブ首長国連邦、クウェート、バーレーン、カタール、ヨルダン、モロッコ、スーダンが参加しており、アメリカも支援している。

イエメンは現在、四つ巴とも言える内戦状態にある。その内訳は次の通りだ。

1.サウジアラビアやアメリカの支援を受ける「スンニ派のイエメン政府」 2.イランの支援を受けていると言われる「シーア派のフーシ派武装集団」 3.「スンニ派のアルカイダ」 4.「南イエメンの独立勢力」

特に対立しているのは、イエメン政府と、政治的な発言力を与えられず、排斥されていることに不満を持つフーシ派武装集団だ。

この内戦は一見、イエメン国内に限定されたものにも見えるが、今回サウジアラビアが、フーシ派の空爆に踏み切った背景には、イラク、リビア、イエメンなどで影響力を増しているイランを牽制したいという思惑もある。つまり、イエメンの内戦は、スンニ派のサウジアラビアと、シーア派のシリアの宗派間対立の代理戦争という側面も持っている。

中東では、日増しに混乱が拡大している。例えば2月には、エジプトがリビア内の「イスラム国」勢力を爆撃したが、中東の国々が隣国との国境を無視して空爆に踏み切ることなど、つい10年前には考えられなかったことだ。

しかし、中東やアフリカのイスラム圏の国境は、約100年前にヨーロッパ諸国が宗派間・部族間の違いを無視して一方的に引いたもの。この歴史的事実を踏まえると、長い年月を経て、欧米のキリスト教国がつくった秩序に対する反発が起きていると言える。

また、さらに長い目で見れば、数百年前にヨーロッパが経験した宗教改革に似たような運動が、現在、イスラム圏で起こっているという見方もできる。確かにイスラム教には、自由や寛容さといった精神が欠けている面があり、それが宗派・部族間の争いにもつながっている。血で血を洗う争いは一刻も早くやめるべきだが、これはイスラム教が宗教改革を迫られていることを暗示しているのかもしれない。

国際社会で起きている諸問題は、その多くが善悪の分かりにくい複雑なものになっている。だが、善悪を分ける基準の一つとして、その思想・信条・行動が世界中に広がった時に、多くの人々に幸福をもたらすか否かという点は大事だ。

混沌とした中で、イスラム圏の国々や欧米諸国は衝動的に戦うのではなく、一度冷静になって、中東の人々にとってどのような結末が望ましいかを再考すべきだ。また日本も、欧米とは異なる近代化のモデルを指し示し、イスラム圏が「イスラム的近代化」を果たす手助けをするべきである。(中)

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2014年10月28日付本欄 イエメンの首都陥落 広がる中東の混乱

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