来日中のインドネシアのジョコ・ウィドド大統領が、日本企業の投資を呼び込むためにトップセールスに奔走している。24日、東京都内で開かれた「ビジネスフォーラム」では、大統領の演説としては異例の、パワーポイントを使ったプレゼンを行い、同国への投資の魅力を力説。メーカーや商社の幹部クラスを中心に約1200人が参加した。

これに先立つ23日には、安倍晋三首相と首脳会談を行い、日本企業による投資の促進や貿易の拡大などの経済連携、海洋安全保障の連携の強化を確認した。

インドネシアは、人口約2億5千万人で世界第4位、平均年齢は28歳という若い国(ちなみに、日本は44歳)。成長していくエネルギーにあふれた同国との連携は、日本にとって大きなビジネスチャンスだ。

だが、単に経済的な利益を求めるだけでは足りない。同国の人々の真の成功と幸福に貢献するためには、宗教や歴史についても深く知ることが必要だ。

インドネシアは世界最大のイスラム教国

インドネシアの人口2億5千万人のうち、約7割にあたる1億7千万人はイスラム教徒(スンニ派)で、世界最大のイスラム教国。ただ、中東にあるイスラム教国のようにイスラム法による統治は行っていない世俗国家で、信教の自由は保障されている。

本来、宗教については寛容だが、最近はイスラム教過激組織「イスラム国」の影響で、一部の過激派組織のテロ行為やシーア派への襲撃が問題になっている。ジョコ氏も安倍首相との会談で、「イスラム国」のテロ対策について、日本と協力していく姿勢を明らかにしている。

350年続いたオランダの植民地支配から9日で解放した日本軍

歴史的には、オランダから約350年にわたる植民地支配を受けていたが、1942年、日本軍によって9日間で解放された。独立の準備を進めたが、45年8月に日本が敗戦を迎えると、念願の独立が反故になることを恐れたスカルノ(初代大統領)ら民族運動家は、急いで独立を宣言。独立宣言文には「05年8月17日」と記されたが、「05年」とは、日本の紀年法である「皇紀2605年」を指している。

独立後、オランダ軍が再び攻めてきたが、4年にわたる戦争では、インドネシア軍に日本の軍人約2千人が参加して、ともに戦った。戦死した日本兵1千人は、インドネシア政府によってジャカルタ南部の国立英雄墓地に祀られている。こうした経緯から、インドネシアには親日的な人が多い。

経済面、安全保障面で連携強化を進めるべき

しかしインドネシアは、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の参加国で、経済分野で中国との関係も重視。海洋進出を続ける中国を念頭にした南シナ海情勢について、安倍首相が「法の支配に基づく対応が重要で、インドネシアの貢献を期待する」と呼びかけた際、ジョコ氏は「南シナ海では各方面に自制を求め、和解に貢献したい」とバランスを取った。

インドネシアに限らず、ASEAN諸国はいずれの国も、経済力、防衛力ともに一国のみでは中国に対抗できない。日本はアジアのリーダーとして、経済面、安全保障面を強化し、ASEAN諸国と連携を深め、アジアの平和と発展に貢献していくべきである。(真)

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