南シナ海の領有権問題で、ベトナムとフィリピンが中国に対抗している。このことについて、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の客員アナリストであるジャック・グレイグ氏が、ナショナル・インタレストで、「次の南シナ海の危機は、中国対インドネシア?」(5月23日付電子版)と題した記事を展開している。

中国が主張する「9段線」の排他的経済水域(EEZ)と、インドネシア領ナトゥナ諸島のEEZが重なっており、これにインドネシアが反発している。グレイグ氏は、そうした領有権問題で、インドネシアは度々、中国に対して、9段線の根拠を明示するように要求してきたとした上で、「ジャカルタ(インドネシア)は、中国が繰り返し主張する9段線から、ナトゥナ諸島のEEZを切り離す公式な合意でもって、明確に主張していくべきだ」と提言した。

グレイグ氏は、1990年代にさかのぼって、中国とインドネシアの領有権の対立に着目しているが、実は両国の対立はさらに根深く、13世紀から始まっている。

1290年、中国の元の皇帝であったフビライ・ハンが、当時インドネシアを支配していたシンガサリ王朝のクルタナガラ王に朝貢を要求した。クルタナガラ王は、朝貢を拒否したために、93年に元が、同国のジャワ島を襲った。王の義理の息子であったウィジャヤは、上陸した元の力を借りて、王の敵討ちをし、さらに元をジャワ島から追い出すことに成功。ウィジャヤは、マジャパヒト帝国を建国し、近隣諸国を次々と治めるなどして、インドネシアを繁栄させた。

これは、同国の小学校の教科書にも記述されており、インドネシア人の誇りであると同時に、中国の脅威を教えている。さらに、太平洋戦争終結後に、中国共産党がインドネシアにある共産党を支援して、内乱や革命を工作したため、インドネシア軍内にも、反中意識があると言われている。

このような歴史的な経緯により、インドネシアは東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で、屈指の「反中国家」である。"第二のフビライ・ハンによる襲来"を防ぐためにも、日本は、中国との争いが表面化しているベトナムやフィリピンはもちろん、インドネシアも側面支援するなど、戦略的な外交をすべきだ。(慧)

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