マーク・リッパート駐韓米大使が、韓国ソウル市内の世宗文化会館で刃物を持った男に襲われ、80針を縫う大けがをした。

男は政治団体代表のキム・ギジョン容疑者。動機については、2日に始まった米韓合同軍事演習が「南北和解の雰囲気を阻害する」ために抗議したと供述しているという。同容疑者は、2010年7月に重家俊範駐韓日本大使(当時)に対してコンクリート片を投げつけた事件で、懲役2年、執行猶予3年の判決を受けている。

最近では、2月27日にシャーマン米国務次官が講演会で、日中韓の指導者に対し、「ナショナリスト的な感覚で敵をけなすことは、国の指導者にとって安っぽい賞賛を浴びる容易な方法だが、進歩は生まない」(6日付朝日新聞)と発言したことが、朴槿恵韓国大統領を批判したととらえられ、韓国内で批判が高まっていた。

中東を歴訪中の朴大統領はこの事件について、「米韓同盟に対する攻撃で、決して容認できない」とコメントを発表するとともに、オバマ米大統領に見舞いのメッセージを送り、リッパート大使にも見舞いの電話をかけた。自身が野党議員だった2006年、遊説中に顔を切られた事件に触れて「どれほどつらいか理解できる」などと話したという(6日付産経新聞)。

朴大統領および韓国政府は、この事件で米韓同盟に亀裂が入らないように躍起になっている。しかし、少し過去を振り返ってみると、朴大統領の発言には矛盾があることが分かる。

2014年1月、中国・ハルビン駅に安重根の記念館ができた。このきっかけは、朴大統領から習近平中国国家主席への、「安重根の石碑をハルビン駅に建ててほしい」という要請だった。安重根を日本の植民地支配への抵抗を象徴する「英雄」として、中韓が共同してたたえるためだ。

しかし、安重根は、日本の初代総理大臣で、初代韓国総監でもある伊藤博文を暗殺して処刑された、テロリストに過ぎない。しかも、当時、日韓併合に消極的だった伊藤博文の暗殺は、韓国の後進性を国際社会に広く伝え、「日韓併合やむなし」との機運を国内外で高めることになった。

安重根をたたえるということは、「民族主義による外国の高官の暗殺」を賞賛することに他ならない。朴大統領自身が、日本大使への投石や今回の米大使襲撃のような暴力を肯定していたとも言える。

リッパート大使の一日も早い回復を祈るとともに、朴大統領がこの矛盾に気づき、同じような事件がくり返されないことを願いたい。(紘)

【関連記事】

2014年3月24日付本欄 安重根記念館建設は習氏の指示 経済不調の原因を百年前の日本に求める韓国の愚

http://the-liberty.com/article.php?item_id=7589

2014年3月11日付本欄 朴槿惠大統領の守護霊霊言が遂に発刊! その"亡国の外交戦略"を本音で語る

http://the-liberty.com/article.php?item_id=7507

2014年3月号記事 救韓論 韓国が「近代化」する5つの方法

http://the-liberty.com/article.php?item_id=7263