『機動戦士ガンダム THE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル』の公式ホームページより。

1979年の放送以来、アニメ界に多大な影響を与えた『機動戦士ガンダム』シリーズ。最新作の『機動戦士ガンダム THE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル』が、28日より全国13の劇場で公開される。

同作は、累計発行部数1000万部のマンガをアニメ化したもので、主人公アムロ・レイの宿敵であるシャア・アズナブルの原点を描いた4部作のうちの第1話。映画の公開が近づく中、雑誌「AERA」(3月2日号)はガンダムを特集。同誌では、「宇宙世紀にみる人と人の『相互理解』」と題する記事を掲載し、立命館大学教授の末近浩太氏のコメントを紹介した。

ガンダムは「古い中東」に似ている?

末近氏によると、争いが止むことがないガンダムの世界は、「古い中東」に似ているという。同氏は、中東の争いについて、日本の幕末で起きた「攘夷派」と「開国派」による対立を想起させると述べている。

伝道的なイスラム文化への回帰を目指すのが「攘夷派」で、世俗化を志向するのが「開国派」というわけだ。

しかし、末近氏は「どうすれば中東対立が解決するか」という問いに答え切っていない。さらに同記事では、争いの背景にある宗教的問題については一切触れておらず、欧米による有色人種に対する差別など歴史的事実を無視している。結局、「人と人との相互理解」という発想は、極めて“日本的"と言わざるを得ない。

欧米の植民地支配も原因

もし、中東の争いを幕末になぞらえるのであれば、日本が近代化を進めたのは、欧米による植民地支配という「古い体制」に対抗するためであるという歴史を指摘するべきだ。かつて中東諸国も近代化を試みたが、その芽は欧米の植民地支配により潰えてしまった。現在、同地域を席巻している「イスラム国」も、根底には欧米の侵略に対する不満がある。

宗教と欧米の抑圧という観点を欠いていれば、相互理解は困難と言える。その点、本誌では中東対立に関する解決策を提示している。

イスラム教圏の中東諸国は、寛容の精神に立ち返り、近代化の思想を取り入れなければならない。一方で、キリスト教圏の欧米諸国も、自らの価値観を押し付ける考え方を改める必要がある。さらに、イスラム教もキリスト教も、同じ神から流れ出たという宗教的真実にも目を向けなくてはならない。(山本慧)

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