過激派組織「イスラム国」に拘束された後藤健二さんについて、さまざまに報じられている。

後藤さんが、イスラム国の拠点と言われるシリアのラッカに入る直前の昨年10月25日に撮影された、ビデオメッセージが残っていた。その映像は、現地にいるシリア人の知人に託されたという。

この中で後藤さんは、「何か起こっても、わたしはシリアの人たちを恨みません。何か起こっても、責任は私自身にあります。どうか日本の皆さん、シリアの人たちに、何も責任を負わせないでください」と語っている。

後藤さんは映像制作会社を経て、1996年に映像通信会社「インディペンデント・プレス」を設立。世界各地を飛び回り、貧困や紛争問題を中心に活動を展開するジャーナリストだ。ニュースやドキュメンタリー番組、書籍などを通じて現地の様子を伝えてきた。

銃口を向けられ、「神よ、守りたまえ」

長年、戦場ジャーナリストとして活躍している後藤さんだが、現場は常に死と隣合わせ。例えば、後藤さんが昨年10月26日付の、キリスト教系ニュースサイト「クリスチャントゥデイ」に寄せたコラムでは、イラク戦争の取材中にアメリカ兵に敵とみなされた時の恐怖が生々しく綴られている。

この中で後藤さんは、取材のために、最前線で戦う兵士と、一般の市民との間には「見えない一線」があり、ジャーナリストはその間を行き来するが、その一線を越えてしまうと、命の保証がないとしている。

またある時、アメリカ兵に銃口を向けられ、頭が真っ白になった。少しでも動き方を間違えれば撃たれるという恐怖から、キリスト教徒でもある後藤さんは「神よ、守りたまえ」と心の中で唱え続けたこともあったという。

「困難の中にある人の心に寄り添いたい」

自らの命を危険にさらしてまでも、後藤さんが伝えたかったこととは何か。後藤さんは取材にかける思いを、以下のように語っている。

「私が取材に訪れる場所=『現場』は、『耐えがたい困難がある、けれどもその中で人々が暮らし、生活を営んでいる場所』です。困難の中にある人たちの暮らしと心に寄り添いたいと思うのです。彼らには伝えたいメッセージが必ずあります。それを世界に向けてその様子を発信することで、何か解決策が見つかるかもしれない」(2014年5月30日付クリスチャントゥデイ)

後藤さんの足を戦場へと向かわせたのは、紛争地の現状を世界中の人に知ってほしいという、ジャーナリストとしての純粋な使命感なのかもしれない。

人間には、時として命をかけてでも成し遂げたいことや、伝えたいことがある。(冨)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『国際政治を見る眼』 大川隆法著

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