政府は、年間2000万円以上の所得がある人が、1億円以上の有価証券を持っている場合、銘柄や時価などの詳細を申告することを2016年から義務づける予定だ。
株券などの有価証券を売った際の税金から逃れるため、税がかからない国に移住して売るケースがあるとして、出国時に所有する有価証券の含み益に対する税を払うことが2016年から義務付けられることがすでに決まっている。今回申告を義務付けるのは、その課税漏れを防ぐためだという。このほど、読売新聞などが報じた。
日本で株券などを売却した時、買った時から値上がりしていて売却益が生じると、その利益に2割の税金がかかる。2013年度までは、特定の業者を通して売った際の税率は軽減税率が適用されて1割で済んだが、この軽減税率も今はない。シンガポールなどではこうした税がかからないため、年間100人ほどが日本から税逃れのために移住しており、この分を逃さないよう、出国時に課税するという。
ただ、売却時に課税のある国に行く人には、2重課税が起きる恐れがあるとの指摘もある。税逃れが疑われる人は年間100人程度に過ぎないにもかかわらず、出国時に一律に課税するのは、「海外に出る富裕層はすべて税逃れが目的」と決めつけているようにも見える。
富裕層に対する所得税も相続税も、今月から増税された。政府は、富裕層への増税や管理強化を「納税に対する公平感のため」と説明している。これだけを聞くともっともに聞こえるが、気をつけなければならないのは、その背景に、マルクス主義的な、「儲けた人は悪いことをした」「貧しい人に再分配することが正義」という考え方があることだ。
富裕層を含めて、事業を興して成功する人は、多くの人を雇用できる人でもある。そうした人々が海外に逃げたくなるような高い税率をかけて罰することは、回りまわって、彼らがつくる雇用を失うことになり、失業率を高めることにつながりかねない。
日本が安全でマナーの良い、住みよい国であることは有名だ。仕事などの都合で海外に住んだ場合も、日本に帰りたいと感じる人は多いという。税のためだけに人々が逃げ出すことを前提にルールをつくるのは悲しい。管理を強めるよりも、富裕層が住みたくなるような税制にするべきだ。(居)
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