最高裁が「初めてマタハラを違法と判断した」と話題を呼んでいる。マタハラとは、妊娠や出産を理由に働く女性が嫌がらせを受ける「マタニティー・ハラスメント」のこと。

広島市の女性が妊娠後、勤めていた病院側に負担の軽い職への異動を求めたが、異動後に管理職を解かれた。それが男女雇用機会均等法に違反するとして、病院側に損害賠償を求めた。女性は2審判決で敗訴したが、最高裁が23日、その判決を破棄し、審理を広島高裁に差し戻した。

最高裁は差し戻しの理由として、「降格措置は、女性が自由意思に基づき承諾しているか、業務上の必要性など特段の事情がある場合以外は、原則として違法」という判断を示した。

今回の判決によって今後、「自分もマタハラを受けている」という声が各地から出るなど、社会問題化する可能性がある。

もちろん、妊娠や子育ては、社会的にみても大事な仕事で、職場でも祝福されるべきだ。マタハラの事例としては、「忙しいときに迷惑だ」と嫌味を言われる例、妊娠中の大変なときに退職勧告を受け、ストレスで流産する例などが挙げられる。妊娠した従業員への心無い対応が多いならば問題だ。

しかし、今回の判断をきっかけに、会社における待遇の変化を、全て「ハラスメント(嫌がらせ)」と決め付ける風潮が広がることは、避けなければならない。

経済的に余裕のない会社ほど、出産・子育てをする従業員を、他の従業員と同等に扱うことは難しいだろう。妊娠した従業員への待遇を変えられない風潮が広がれば、企業は妊娠する可能性のある女性を昇進させることに躊躇する。女性を採用する際も、「この女性がいつか妊娠しても、他の社員と同じ待遇をしなければ、訴えられるかもしれない」というリスクを割引いて、採用しなければいけなくなる。どこかにしわ寄せが来るのだ。

子育てを、今までと同じ水準の仕事と"兼業"するのは簡単ではない。あきらめる部分も必要だろう。逆に言えば、子育てはそれだけ尊い仕事といえる。自分の収入や手柄を考えず、子供のために生きるという徳ある生き方は、自己中心的に出世を追及した男性の人生よりも価値がある。

それぞれの家庭・経済事情があるので一概には言えないが、妊娠をきっかけに会社での待遇が悪化しても、「子育て」という聖職に誇りを持ち、収入分は旦那さんに頑張ってもらうなどの考え方をとってもいいのではないか。

企業側も女性の側も、子供を生んで育てることの大変さと尊さを理解したうえで、この問題を見る必要がある。(光)

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幸福の科学出版 『女性らしさの成功社会学』 大川隆法著

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