中国の国家統計局が発表した7~9月期の実質GDPは、前年同期比7.3%増となった。これは、リーマンショック以来、約6年ぶりの低水準だ。中国経済が大減速すれば、世界経済が打撃を受けるため、警戒感が高まっている。
しかし、中国経済の実態はさらに深刻な状況にあるかもしれない。今回、減速を見せたGDPの統計自体が、「水増し」されたものである可能性が高いのだ。
中国のGDPの信憑性を疑わせるような話は多い。地方政府から報告されるGDPを合計すると、中央政府が全国値として発表する数値を大幅に上回る。2011年には、その差の分がなんとトルコの経済規模レベルとなった。
また、内部告発サイト「ウィキリークス」が公開した米外交公電に、興味深いエピソードがある。中国の李克強首相が、2007年に遼寧省で党委書記を務めていた時、駐中米国大使に「GDPは人為的に操作されており、信頼できない」と話したという。
李克強氏自身は、GDPに代わる数字として、「電力消費」「鉄道貨物取扱量」「銀行融資」の3つを見ていると明かした。この話が知られてから、3つの数字は「李克強指標(インデックス)」と呼ばれ、中国経済で信頼できる数少ない指標として世界の専門家が“重宝"しているという。
この「李克強指標」を見ると「中国の実際の経済成長率は3~4%なのではないか」、という指摘もある。もしそうなら、中国の経済成長率は2倍近く水増しされている。毎年水増しされていれば、中国のGDPは、国際社会の認識よりはるかに小さいかもしれない。
そうだとすれば、なぜ中国はGDPを水増しするのか。
一つには、地方官僚の昇進に、各省のGDPが重視されてきたことがある。役人が出世のために、GDPを過大報告しているのだ。また、中国政府全体もGDPを大きく見せ、国民に中国共産党の正当性を示す狙いがあるだろう。国際社会で政治的な影響力を持ったり、経済的な投資を呼び込んだりすることにもつなげられる。
この「GDP水増し問題」は、中国の不動産開発にからむ地方政府の借金問題に劣らず深刻な、「もう一つのバブル」かもしれない。
もしそうだとしても、これはGDPで中国に抜かれた日本にとって、必ずしも朗報とは言えない。こうした事実が露呈して、中国経済への信用が一挙に崩れれば、何らかの経済的危機につながる。日本はもちろん世界経済が大打撃を受ける。
また、国民の不満を外に向けるために、ベトナム、フィリピンなどのアジア諸国からの経済的利益を狙う可能性が高く、歴史問題で因縁をつけられている日本もその対象になりかねない。中国バブルは対岸の火事ではなく、日本が自国経済と国防力を強化する必要性は大きい。(光)
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