青色発光ダイオード(LED)を開発した日本人研究者3人にノーベル物理学賞の授賞が決まったことについて、このほど中国の国営メディア・新華社通信は、「日本はなぜこんなに多くのノーベル賞を取れるのか」と問いかける記事を配信した。

似たような問いで有名なのが、中国で最も尊敬される科学者・銭学森(せん・がくしん)の、次のような言葉だ。「なぜ中国の大学は、1949年以降、世界に通用する独創的な思想家や画期的な科学者をただの一人も生み出していないのか」。

「銭の問い」と呼ばれるこの問題意識は、単に中国のプライドに関わるものではない。米シカゴ大学名誉教授でノーベル経済学賞受賞者のロナルド・コース氏は、この独創性や発明の貧弱さが、「中国成長の最大のアキレス腱」と指摘する。

中国は長年、「世界の工場」として経済成長してきた。しかし、賃金の安さで東南アジア諸国などに勝てなくなり、現在、岐路に立たされている。今後とも経済成長を続けるには、イノベーションを起こし、独創的な技術や発想で戦う、かつての「ソニー」や「グーグル」に匹敵する企業を生み出さなければならない。

それを実現するには、中国に「アイデア自由市場」が必要だ、とコース氏は主張する。これは、「アイデアを創り、交換するプロセス」のこと。大学や企業で自由な議論や研究を行える環境や、インターネットや出版を通して、アイデアを自由に交換し合う場だ。そこから、多くの科学者や起業家が生まれ、経済が発展する。

だが、中国ではこの「アイデア市場」が、当局の厳しい管理下にある。

メディアに厳しい統制がかけられているのは有名だが、大学にも研究・教育の自主権がほとんどない。中国政府の教育部(日本でいう文部科学省)が、大学の「党書記」と「学長」を任命する。学位取得課程も、全て教育部の承認が必要だ。研究費用もほぼ政府が負担しているため、各大学は革新的な研究や、経済発展に貢献する研究をしたくても、教育部の意向に従わざるを得ない。そこからは、自由なアイデアは生まれにくい。

もちろん、日本も他人事ではない。日本のノーベル賞受賞者には「アメリカ帰り」が多く、彼らは声を揃え、日本の研究環境の不自由さを指摘する。STAP細胞の騒動の本質も実はそこにある。日本の科学界は、旧態依然とした「常識」で若い芽を摘んではいけない。

今回、中国の国営メディアの報道は、日本をほめる形になっているが、その日本の科学界がまだまだ不自由であることを考えれば、裏返せば、発展の余地があるということを意味する。「繁栄には自由が必要」という真理は、中国のみならず、日本にとってもカギとなるだろう。(光)

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2014年10月8日付本欄 「自由主義」に基づく研究開発を 日本人3人がノーベル賞を受賞

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2014年3月号記事 習近平がネット管理組織トップに就任 「情報」だけで崩壊する共産国の脆弱さ

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