中東の過激派組織「イスラム国」に、80か国以上から推計1万5000人以上の若者が合流している。シリア内の「イスラム国」支配地域で、テロリスト予備軍である「外国人戦闘員」として訓練を受けているようだ。
具体的には、欧米主要国だけでも、フランスから約1000人、イギリスから500人以上、ドイツから400人以上、アメリカから100人以上が合流している。
これに対し国連安全保障理事会は24日の首脳級会合で、外国人戦闘員が欧米などに帰国すると、テロを起こす可能性があるとして、戦闘員の移動を制限する決議を採択した。
本欄で注目したいのは、ウイグル自治区からイスラム国へ合流している若者が100人ほどいることだ。
この若者たちは、中国共産党の弾圧下にある新疆ウイグル自治区で、イスラム教の信仰を持ち続けている人が多いという。実際にインドネシアでは、不法入国した新疆ウイグル自治区出身の男性4人組が、インドネシアでテロ活動の訓練を受け、逮捕された。彼らはその後、「イスラム国」に合流する予定だったという。
このように、「イスラム国」でテロリスト訓練を受けてからウイグルに戻り、中国共産党に対する反政府攻撃をすることが彼らの狙いと見られる。
もともと、ウイグルではイスラム教の信仰が広がっていたが、中国共産党が自治区として支配して以降、信教の自由や思想の自由が抑圧されるようになった。現在では、中国共産党の監視下でしかイスラム教を信仰できない状態になっている。
そのため、共産党のウイグル政策に抗議する運動が多発しており、21日にも、新疆ウイグルで連続爆発事件が起こり、100人以上が死傷している。
これに対し「イスラム国」は、「東洋でも西洋でもムスリムの権利が強制的に剥奪されている」として、中国を筆頭で批判。復讐を宣言した。数年後に新疆ウイグル自治区を占領する計画だという。
「イスラム国」がこの計画を立てるに至ったのは、ウイグルでの度重なる抗議運動の様子を見て、「中国はイスラム民族を迫害している」と認識したからだろう。
これまで中国は、欧米と一線を画して親イスラム路線を敷いてきたが、この外交方針が行き詰まる可能性が出てきたと言える。
事の発端は、やはり、中国共産党が信仰を軽視する政策を取っていることだ。イスラム教は、経済的な利益よりも、伝統的な信仰を重んずる風潮が強い。「イスラム国」ならなおさらだ。
「イスラム国」の過激なテロ行為などはもちろん容認されるものではないが、信仰への理解なくして、イスラム教国との関係を深めようとしてきた中国の認識の甘さが改めて明らかになったと言える。(飯)
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