朝日新聞が5月、福島第一原発の事故当時、現場の職員の9割が「福島第一原発構内の線量の低い場所に退避」という吉田昌郎所長の命令に反し、福島第二原発に撤退していたと報じた。同紙は政府事故調査会が吉田所長から聞き取りをした際の「聴取結果書」、いわゆる「吉田調書」を入手し、その事実が明らかになったとしていた。しかし、共同通信の連載記事によって、所員の命令違反というのは「誤報」である可能性が高まっている。
その連載記事『全電源喪失の記憶』は、地方紙を中心に掲載されている。これによると、吉田所長は2011年3月15日、高濃度の放射性物質を含んだ蒸気が大量放出される危険が高まったため、事故の収束作業に関連のない所員について「線量の低い場所がなければ、第二原発に撤退させる」と指示していた。また、事故の収束に必要な所員は各班の班長から指名された。
撤退の手順については吉田所長と部下との間で様々なやり取りがあったことが記されている。その中には、作業を続けるために撤退しなかった所員、そして、指示に従っていったん撤退したものの、「作業員の交代が必要」という要請に応じて第一原発に戻った所員もいたという。
つまり、この記事に照らせば「所員が命令に違反して撤退」という朝日の報道は間違いであり、実際は、吉田所長の指示の下、整然と事故対応と第二原発への撤退が行われたというのが真実のようだ。そして何より、事故収束にあたった所員は命をかけて作業を続けていた。
100人近くの原発事故関係者に取材を行い、『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日』を執筆した作家の門田隆将氏は、この連載については「多くの場面が、拙著とも重なっている」と自身のブログで紹介。現場を取材する他紙の記者も「あの時の"現場の真実"」を知っている記者が多くなってきたとして、「朝日は現場に取材もしないまま、あの記事を書いたのではないかと疑ってしまう」「自らのイデオロギーに固執し、真実と真逆の記事を書いても良しとする姿勢には、同じジャーナリズムにいる人間として、どうしても納得ができない」としている。
「東電悪玉論」という結論を導くために事実をねじ曲げたような朝日新聞の報道は、命をかけて事故を処理した吉田所長や、所員に対する著しい名誉毀損となるだろう。
福島第一原発事故についての東電の責任を非難する声は大きい。しかし、東京電力こそ地震・津波の最大の被害者であるという点を忘れてはならない。当時の菅直人首相の「東電乗り込み」など政府の初動のまずさや、国の指導基準の問題を全て東電に押し付けて、「原発をやめるべき」という結論ありきの方向に導くことは、日本のエネルギー政策を誤らせる。(晴)
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