ウクライナ東部では、30日まで時限的な平和を味わっている。27日を期限としていた、ウクライナ政府と親露派の停戦合意がさらに3日間延長された。停戦の目的について、同国のポロシェンコ大統領は、「テロリストが武器を放棄できるようにするため」と語るなど、民族争いの様相を呈している。

だが、ウクライナの武力闘争を緩和する代償として、数カ月の歳月と250人以上の民間人の犠牲が必要だったのか。そもそもの発端は、同国の経済が立ち行かなくなって、大統領がEUに救済を求めるのか、ロシアから援助してもらうのかという「経済問題」であったはずだ。それが、民族対立の泥沼化を招いた責務は、指導者にあると言わざるを得ない。

プリンストン大学名誉教授のスティーブン・コーエン氏も、ロシアトゥディ(電子版)で、「歴史的な類似としては不正確かもしれない」と前置きしつつも、「(アメリカの南北統一をした)リンカーンは、南部連合をテロリスト呼ばわりしなかった」と断じている。

奴隷や人種差別に対して戦ったリンカーンは、大統領就任演説で「われわれは敵同士ではなく、友であります。われわれは敵であってはなりません」と語り、南部人に向けたメッセージを送った。だが、ウクライナの場合は、その逆であり、ポロシェンコ大統領自らが東部の緊張状態を演出している。

一方、同大統領を支持するアメリカも、ロシア外交に一貫性が見られない。コーエン氏も、「今、ウクライナで行っていることは、恐らく現在、持っている最良の潜在的な同盟国を遠ざけることだ」とし、イランの核開発などで協力していたロシアを突き放すアメリカ外交は、間違っていると指摘している。

結局、欧米諸国は、何のために戦っているのかという「大義」が見当たらず、ロシアに対して、「ナチス」「テロリスト」などと、プロパダンダを仕掛けて行き詰まっている。大義ある戦いとは何か、国内の融和をどうすべきかを知るためにも、ウクライナやアメリカはリンカーンのような先人に学ぶべきだ。争いを煽るポロシェンコ大統領は、憎しみしか生み出さない。(慧)

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