5月4日付読売新聞コラムで、慶応大学の竹森俊平教授がウクライナ危機について以下のように論じている。

  • ウクライナ危機が起きた原因は、EUに戦略性が欠如していたから。
  • 破綻寸前のウクライナに接近する経済的意味はEUにとって小さいが、ロシアにとって同国は勢力圏。ロシアが欧州に輸出する石油やガスの4割を運ぶパイプラインが通っており、重要な意味を持っている。
  • EUが安易にウクライナに接近したのは戦略上の誤りだった。ロシアがクリミア編入を決議するまで、ドイツはこの誤りに気づかなかった。
  • ロシアの方針を変えさせるには、アメリカだけでなくEUの経済制裁が必要だが、ロシアからのエネルギー輸入を止めることは、EUにとっても大打撃。
  • プーチン大統領は、これまでのユーロ危機の展開から見て、経済危機を再発させるような経済制裁はEUにはできないと踏んでいる。

竹森教授は、今回のウクライナ危機を、基本的に「経済争議」の観点から捉えているようだ。そして、EUにはウクライナをロシアから引き離すほどの経済力はなく、それは同時に、中国が同様の行動を起こした際に、EUがどの程度の制裁を行うかを測る材料にもなっており、日本にとってもウクライナ危機は他人事ではないと論じている。

ウクライナ危機が起こってから、大川隆法・幸福の科学総裁は、「チャーチルの霊言」「プーチンの霊言」などを矢継ぎ早に収録(いずれも『忍耐の時代の外交戦略 チャーチルの霊言』『プーチン大統領の新・守護霊霊言』として発刊)し、今回の問題の本質に迫っている。

そのなかで一貫しているのは、今回の危機はあくまで「経済戦争」であり、「冷戦への回帰」ではないという点だ。チャーチルの霊はさらに、両国が地続きであることや、黒海に通じる位置にあることなどから、「地政学的に見れば、やはり、ウクライナとロシアが協力関係にあることは、悪いことではないと思っている」と述べるなど、相互の国益を鑑みた時に、プーチン大統領の行動には一定の理があるとしている。

もう一点は、EUだけではウクライナ経済を救済できないという点だ。プーチン大統領守護霊も「(EUのやり方は)銀行がさあ、潰れかけの会社を切るときのやり方とまったく一緒」「ウクライナは滅茶苦茶にされて、ええところだけを、ちょっと残すかどうかぐらいの話になって、あとはものすごい難民みたいなものの山になる」と、あくまでウクライナに住むロシア人を救済するためであることを強調した。

ウクライナ危機は、ロシア介入以降のみがクローズアップされているが、そもそも、EUがウクライナに接近したことの是非についても議論されるべきだろう。

そして、日本が今回の危機から読み取るべきことは、中国の覇権主義に対して、EUやアメリカが制裁に動いてくれることを期待するのではなく、この機にロシアとの外交を見直すことが、国防上の重要な判断になるということだろう。(雅)

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