EUとロシアは、ウクライナへの天然ガス供給をめぐり、このほど三者協議を開いた。ロシアはガス代の8割値上げを宣告し、ウクライナがガス代金を払わなければ、6月にガス供給を制限するとしている。一方で、EUはスロバキアなどを経由してウクライナに天然ガスを供給しようとしている。

ロシアを糾弾しているEUだが、本当にウクライナを救済できるのだろうか。実は今、EUからの脱退や、独立を求める地域が出てきている。

EU加盟国のイタリアのベネト州では、3月に政治団体がインターネット上で住民投票を実施。260万の投票のうち、89%がイタリアからの独立を支持した。同州がイタリア政府に収める税金が約10兆円である一方、政府から同国への投資は約3兆円に過ぎない。イタリア政府はEUから勧告されている財政健全化を達成するため国内の経済成長に力を注げない状況だからだ。その他、スペインのカタルーニャ地方やイギリス・スコットランドなどでも独立の動きがみられる。いずれもEU加盟国であるが、思うように経済成長できていないことが、独立運動を後押ししているようだ。

また、4月末のオランダの新聞報道によると、経済の停滞に悩むオランダのルッテ首相が2012年、オランダのEUからの離脱をほのめかしていたという。コンサルティング会社のキャピタル・エコノミクスは、オランダがEUを離脱すれば、国民所得は2035年までに10%増えるという調査結果を発表している。EU予算への拠出金をカットできることや、政府が主体的に財政政策や金融政策を行えるというのが根拠だ。

経済成長よりも財政規律を重んじるEUの方針に縛られ、ヨーロッパは没落の危機にある。経済危機に陥ったギリシャやポルトガルについても、EUは救済できているわけではない。ギリシャの失業率は26%を超えたままで、若者の失業率は60%を超えている。今のままでは、EUがウクライナを支援しても、ウクライナが「第二のギリシャやポルトガル」になるのは目に見えている。

ウクライナにおけるロシアの行動に批判が集まっているが、その真意を探るには、EUが弱小連合であり、他国を救う力を持っていないという見方があることも理解する必要がある。(晴)

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