2013年度エネルギー白書の内容が、このほど明らかになった。

この白書には衝撃的な事実が記載されている。それは、2013年の電力供給における化石燃料を利用した電源への依存度が、約9割に達しているというものである。これは第一次石油危機時点(約80%)を上回る水準となっている(6月3日付産経新聞)。

このような状況となった原因は、東日本大震災の後、原発稼働停止が長期化しているためだ。震災前の2010年における化石燃料を使った電源への依存度は62%であり、原発の稼働停止以降、急激に化石燃料への依存度が高くなっていることがわかる。

この事実は、日本が国家として二つの大きな問題に直面していることを意味する。第一は「国富の流出」である。政府の試算では原発稼働停止に伴う火力発電への依存度増加によって、2013年度の燃料費が2010年度比で3.6兆円(1日あたり、約100億円)増加し、その結果、同年度比較で家庭用電気料金が約20%、企業向けで約29%上昇しているという。

化石燃料への依存度増加という事態が、国民の生活を圧迫し、しかも国民から吸い上げた富が継続的な化石燃料の仕入れのために、国外に流出し続けているのである。

先般、今夏の原発再稼働見送りが決定された。6月に入って猛暑日を記録する地域が続出しているが、今夏も節電で多くの国民が熱中症の犠牲になってしまうだろう。

もう一つは、エネルギー安全保障の問題だ。日本は世界3位のエネルギー消費国でありながら、発電の約9割を海外から輸入する化石燃料に頼っている。海外からの資源が日本に入ってこなくなれば「最悪の事態」となるが、それは決して非現実的ではない。

先月、ベトナムが領有権を主張するパラセル諸島周辺において、中国が一方的に石油掘削を行い、ベトナム船と衝突が相次いでいる。このように昨今、「シーレーン」と呼ばれる日本の貿易の要である海洋交通路上において、中国の露骨な拡張主義が紛争状態を引き起こそうとしている。日本のエネルギー安全保障は極めて切迫した状態にある。純国産エネルギーといわれる原子力発電を再開することは、当然の急務であるだろう。

さらに、日本が中国の不穏な動きに対応し、積極的にシーレーンを防衛できるよう、集団的自衛権の行使容認や憲法改正への取り組みが急がれる。

今、政府は大局的な決断を迫られている。

(HS政経塾 数森圭吾)

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