依然として進まない原発の再稼働に、政財界がしびれを切らしている。

日本経団連や商工会議所、経済同友会の3団体は28日、「エネルギー問題に関する緊急提言」を発表。「現下の最重要・最優先課題は、低廉・安定的な電力供給の早期回復」と強調して、人事体制の強化や審査の効率性の改善によって、原発の再稼働プロセスを加速させるべきと提言した。

その背景には、原子力規制委員会による原発の安全審査が、昨年7月に審査を開始したにもかかわらず、現在も結論に至っていないことがある。現在、11原発18基の原発が安全審査の申請をしているが、再稼働の判断が当初の想定より大幅に遅れている。優先的に審査されている鹿児島・川内原発でも、再稼働は秋以降にずれ込む見込みだ。

それを受け、原発停止の悪影響を懸念する声が、財界から一層強まっていた。提言と同時に経団連が公表した企業アンケートでは、東日本大震災以降の電力料金の値上げにより、収益を減少させた製造業社は86%に上る。さらに、電気料金をめぐる現在の状況が続いた場合は、約9割の製造業社が「減収」と回答。47%が「生産の減少」、31%が「雇用の減少」の可能性を示唆していた。

このように再稼働の遅れへの懸念が強まる中、政府は27日、原子力規制委員会の新たな人事案を提示。9月18日で任期が切れる島崎邦彦氏と大島賢三氏を再任せず、田中知・東大大学院教授と石渡明・東北大教授を起用する方針を示した。

特に、島崎氏は地震や津波の対策に関する審査を主導してきた人物だが、「審査が厳格過ぎて、原発再稼働を遅らせている」との批判もあった。島崎氏が率いる専門家チームの下、関西電力は、大飯原発3・4号機の地震対策不足を指摘され、今年度中の再稼働の見通しが立たなくなったという経緯がある。自民党を中心とした政界からも、島崎氏の委員交代を求める声は強まっていた。

安倍政権は原発を再稼働する方向性を示しており、今回の規制委員会の委員変更の方針は、遅れている再稼働を進める上で必要な判断だ。今後も、よりはっきり「原発推進」を打ち出し、一刻も早く原発を稼働させるべきだ。

(HS政経塾 森國英和)

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