中国が本格的に、高速鉄道(新幹線)の輸出に乗り出した。アフリカや東南アジア、東欧などの新興市場での受注を目指しているという。

中国製の新幹線の輸出は、政府主導で行われている。李克強首相は「新幹線のセールスマン」と呼ばれるほど、首脳会談の度に中国製の新幹線をアピールしてきた。また、新幹線の輸出は政府間の援助とセットにして進めており、李氏は5月にアフリカ4カ国を訪問するに際して、120億ドルの資金援助の追加を表明。インフラ整備の協力にも積極的で、アフリカに「高速鉄道(新幹線)研究開発センター」を作り、技術援助をする予定だという。

中国は日本などの技術供与を受けて技術を習得し、2009年には新幹線の総延長が世界一になった。2011年に200人以上が死傷した脱線事故が起こったが、その後も建設し続け、2013年末には国内の主要路線がほぼ完成した。そのため、次は国外に市場を求め、新興国への輸出に乗り出している。

中でも、中国はアフリカを重視しており、これまで新幹線以外にも経済援助をしてきた。しかし、現地では、安価な中国製輸入品によりアフリカの工業が停滞しているという懸念が広まっており、ナイジェリア中央銀行総裁のラミド・サヌシ氏は、「アフリカは搾取されている」と中国を批判している。

実際、オーストラリアでも、2007年に親中派のラッド氏が首相に就任した際、資源採掘の名目で、オーストラリア国内の多くの土地や鉱山を中国が買収して問題になった。その後、オーストラリアは対中経済依存から脱却し、経済の多様化を図る方向に舵を切っている。

近年、南シナ海でフィリピンやヴェトナムと中国が衝突していることが象徴するように、中国の本質は武力を背景にした「勢力の拡大」であることを忘れてはならない。一見、経済支援に見える中国製新幹線のアフリカ輸出も、手放しに喜ぶべきではない。

一方、日本も新幹線やリニアの輸出を目指しており、4月には新幹線の海外輸出を進めるための国際高速鉄道協会(IHRA)も設立され、欧州・東南アジア・ブラジル・オーストラリアでの受注を目指している。最近では、アメリカにリニア新幹線の技術を無償で提供する動きもある。

日本の新幹線は安全で、新幹線が開通してから今日に至るまで、一度も事故を起こしたことがない。その点で、コストは安いが、安全性に懸念のある中国製の新幹線よりも、日本の新幹線のほうが、世界の人々の暮らしを便利にできるだろう。

中国製新幹線の輸出は、“援助"の名で行われる中国の「世界計画」の一端であることを再認識する必要がある。その意味でも、日本こそ、世界の「宝」である新幹線やリニアの技術を積極的に輸出し、世界に貢献していくべきだろう。(飯)

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