東京都教育委員会が、都立高校に大手予備校の講師を呼び、教育内容の改善指導を依頼することを決めた。22日付日本経済新聞が報じた。

授業内容やカリキュラム、定期テストの内容などについて、今後4年間で計36校の都立高校が、河合塾、代々木ゼミナール、駿台予備学校、ベネッセコーポレーションといった大手予備校の分析を受ける。各高校は予備校から提示された改善案に取り組み、一定期間を置いて予備校の評価を受ける。予備校が大学受験レベルで公立高校の指導に本格的に乗り出すのは今回が初めてだという。

予備校・塾の学業指導は、総じて学校よりも優れている。学校に比べて授業の質やレベルが下がれば存在意義を失い、講師個人は職を失うという緊張感の中、常にスキルを磨いているからだ。佐賀県武雄市が民間の予備校と連携し、「官民一体型」の小学校を開設するとして注目を集めたが、日本の教育レベルを高めるためにも、こうした取り組みは今後も必要だろう。

しかし、「学業を修める場」である学校が、「授業内容」や「カリキュラム」といった中心的仕事を予備校に頼る状況は、教育の“主力"が予備校・塾になりつつあることを象徴している。

日本の学校は事実上、教育のかなりの部分を予備校・塾に“外部委託"している。例えば中学3年生の約6割は予備校・塾に通っている。また、全国の予備校・塾の数は、全国の小中高校の合計数よりも多い(「第1回子ども生活実態基本調査報告書」Benesse 教育研究開発センター、2005年)。多くの学生が「学力を伸ばしたければ塾へ行く」「大学受験で合格したければ予備校に通う」と考えており、予備校・塾の“繁盛ぶり"は、いかに学校が国民の教育ニーズを満たせていないかを示している。

「予備校・塾が頼りになるならそれでいい」というわけにはいかない。それにより、子どもたちが予備校・塾との二重生活を強いざるを得なくなるという状況は、大きな弊害を生んでいる。子どもにとっては体力的、精神的に大きな負担となる。そのストレスが、人格に悪影響を及ぼし、いじめなどの一因にもなる。また、家計にとっても予備校・塾の費用は大きな負担だ。経済力による学力格差も助長する。

一方、学力向上に関してあまり頼りにされていない学校に、多額の税金が投入されている状況は不健全でもある。

やはり、「塾の要らない学校」への改革は急務だ。その意味で、文部科学省主導で「ゆとり教育」からの脱却がなされ、「学力テスト」の実施など、教育改革は徐々に進んでいることは評価できる。しかし、予備校・塾との圧倒的な指導力の差を埋めるには、相当な困難が予想される。日本の教育の国際競争力を維持するには、予備校・塾を学校として認めることも考えるべきだ。

予備校・塾で勉強し、試験で一定の学力を証明することで、小学校や中学校の卒業資格を与える。そうすれば、学生は短い時間で効率的に勉強でき、学力を伸ばしながらも運動や趣味などに時間を費やせる。また、道徳教育など学力以外の部分に関しても予備校講師に教えられないことはない。「いつやるの? 今でしょ」で有名な東進ハイスクールの林修氏のように、「人生論」で生徒の心を掴む名物講師も増えている。

塾・予備校の教育レベルに、日本の学校教育が学ぶことは大きい。その最たるものは、教える側にも競争原理が必要であるということだろう。少なくとも、塾・予備校に通う多くの子どもたちや、彼らの親はそう考えている。(光)

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幸福の科学出版 『教育の使命 世界をリードする人材の輩出を』 大川隆法著

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