『NHKスペシャル 超常現象 科学者たちの挑戦』という本が、NHK出版から発刊された。1月~3月にNHKスペシャルなどで放送した内容を中心にまとめたものだ。第一部では、幽霊や生まれ変わりなどの心霊現象について、第二部では、念力や透視能力などの超能力について、それぞれ検証取材をした記録が書かれている。

おもしろいのは、第一部の執筆者であるディレクターの梅原氏が、「僕は、魂や死後の世界は存在しないと考えてきた」と書き始めているのだが、最後には、「取材を終えた今は、不可思議な現象は存在すると素直に思う」と述べ、もし幽霊がいるのなら会ってみたい(ただし、あまり怖くない方法で)という、「幽霊さん」へのメッセージで終わっているところだ。

最新科学で説明できない現象に次々と出会い、前世の記憶を語る子供たちが、前世の家族と対面して、本人でなければ知らないようなことを話す事例の取材を通して、だんだん死後の世界を否定できなくなっていく様子が赤裸々に綴られている。

ただ、科学的な観測結果を紹介していく際、「死後の世界はない」という立場に立って偏った検証をしているところが残念だ。

たとえば、イギリスの有名な幽霊屋敷マーガム城で様々な観測機器を用いて幽霊探しをするのだが、その際、調査チームの複数のメンバーがほぼ同時刻に首から背筋にかけて嫌な寒気を感じる。それを、「マウスが天敵である蛇などのにおいをかぐと体温が下がる」という実験結果と比較して、マーガム城で寒気を感じたのは単に恐怖を感じたからだと結論付けている。

本来ならば、死後の世界の有無に関して中立の立場をとるべきだろう。「今は解明できなくても、いつか必ず科学的に説明できる」として、様々な心霊現象を科学的に説明しようとしているが、「死後の世界があること」が、科学的に説明できる可能性もあることを忘れるべきではない。

また、第二部では、「超能力がインチキと区別がつきにくい」ことを強調しすぎている感が否めない。

冷戦時代、アメリカ軍で実際に透視能力を使ってソ連の軍事工場の透視などを行っていた「元超能力スパイ」の協力のもと透視の実験をしている。しかし、インチキを防ぐことに一生懸命になりすぎて、透視の対象を非常に複雑にしている。本当に透視能力のメカニズムに迫りたいのなら、彼らがスパイとして透視をしていた時の状況を再現しつつ、少しずつ条件を変えて実験すべきだろう。

海外では、透視能力が軍や警察の仕事に役立てられたり、UFO目撃のニュースが報じられたり、イギリスでは幽霊屋敷が観光スポットになっていたりする。こうした中で、これまで日本のテレビは、超常現象について「トンデモネタ」としてしか扱ってこなかった。それをNHKが真面目に取り上げたことは、意義のあることかもしれない。

宗教の立場から見れば、的外れな実験や、上記のように残念な取り上げ方をしている部分もあるが、これを第一歩として、人知では理解が及ばない出来事であっても、真摯に伝えるようになってほしいものだ。(紘)

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