中国雲南省昆明市の昆明駅で1日夜、黒い服を着た複数の人物が刃物で無差別に切りつける事件が発生し、少なくとも29人が死亡、130人以上が負傷した。公安当局は容疑者4人を射殺し、1人を拘束。昆明市当局は、現場の状況から新疆ウイグル自治区の独立勢力による組織的テロであるとの見方を示した。
しかし、雲南省は中国南西部に位置しており、北西部の新疆ウイグル自治区からはかなり離れているほか、昨年10月の北京の天安門前での車炎上事件以降、ウイグル人に対する当局の監視は厳しくなっている。また、中国版ツイッターの微博(ウェイボー)では、事件についての投稿が相次いだが、特に犯人に関わる情報などは政府の検閲により削除されているという。
中国では、報道が当局の意図によって規制・捏造されるため、断定的なことは言えない。ただ、今回の事件が、ウイグル人が集団で行動を起こすことが難しい状況の中で起きた事件であることは確かだ。とすれば、ウイグル人以外の犯行という可能性もあり、5日に開幕を控えた全国人民代表大会(全人代)をにらんでの、指導部への抗議という見方もできるだろう。また、もし本当にウイグル人による犯行であれば、テロではなく、決死の抗議行動という意味合いが強いと言える。
もちろん、無差別に人を傷つけることは許されることではない。しかし、中国では今年に入ってからも、2月13日に四川省でチベット人の男性が、共産党政権の抑圧的なチベット統治に抗議して焼身自殺をしており、こうした手段でしか主張を訴えることができない中国の実情ははっきりしている。
GDPが世界第二位の大国となった中国が、人権を無視し、国民の自由を抑圧している現実を、国際社会はいつまでも許していてはならない。(紘)
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