政府が高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の実用化に向けた目標を、白紙にする見通しだという。高速増殖炉は発電しながら核燃料を生み出す「夢の原子炉」として期待されているが、2月中に閣議決定するエネルギー基本計画には盛り込まれない予定だと、7日付日経が報じた。

「もんじゅ」は1994年の稼働後、2010年に原子炉内で装置の一部が落下する事故があるなどし、それ以来停止したままになっている。東日本大震災後に施行された新規制基準を満たすことが難しく、研究結果が出る時期のめどが立っていないなどとして、その使用目的を「核のゴミを減らす技術の研究」に変更することが浮上している。

高速増殖炉は原子力発電の一種で、名前に「増殖」という言葉が入っている通り、ウランを使って発電しながら、同時に燃料として使えるプルトニウムを作りだすことができる。燃料の自給が叶う「夢の原子炉」として期待されてきた。

ロシアや中国、インドなども同様の仕組みを研究しているが、エネルギー自給率がたった4%に留まる日本にとっては特に意味のある技術と言える。政府は石油を約3カ月分備蓄しているものの、万が一、石油の多くを頼っている中東などで紛争が起きたり、輸送路のうち紛争地域である南沙諸島などが封鎖されて輸入が途絶えたりすれば、あっという間に生活も産業も止まってしまうからだ。高速増殖炉が実用化されれば、そうした心配はなくなる。

また、高速増殖炉で作られたプルトニウムは発電にも使えるだけでなく、核兵器に転用することもできる。これは日本の潜在的な核抑止力となるため、安全保障に役立つ。

「これまでに1兆円もかかった」、「1日に維持費5千万円もかかる」と、「もんじゅ」の費用対効果を疑問視する声もあるが、原発が停止していることで余計にかかっている化石燃料代の年間約4兆円に比べれば微々たるものだ。高速増殖炉の研究は、安全性を高め、続行する以外に選択肢はない。(居)

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