政府はこのほど、太平洋の公海海底にある「コバルトリッチクラスト」の探査権を取得した。15年間は独占的に探査でき、レアメタルなどの生産につながる可能性もあるという。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が、国際海底機構と契約した。

対象になるのは、南鳥島沖600キロメートルの約3000平方キロメートル。JOGMECが最終的に開発する1000平方キロメートルを選定するための探査活動を行う。

コバルトリッチクラストとは、コバルトや白金、ニッケルなどのレアメタルや、レアアースを多く含むアスファルト状の物質。水深1000メートルから2400メートルにある海底の表面に露出しており、数センチから数十センチの厚みがある。

レアメタルやレアアースは、リチウムイオン電池やネオジム磁石のようなハイテク機器を作るために必要な素材だ。南鳥島沖のこの海域には、日本の年間消費量に換算して40年分にあたるコバルトなどが埋蔵されているという。

日本のものづくりにレアメタルやレアアースは不可欠だ。しかし、中国が2008年に世界の産出量のおよそ9割を占めていたレアアースは、中国の輸出規制によって、値段が高騰した。政府は米国やオーストラリアなどにも輸入先を分散し、2012年上半期には中国への依存度を50%以下にまで下げた。

資源の入手先が偏れば、その国で政情不安などが起きたときに日本の産業が打撃を受けることになるため、政府はレアメタルなどの資源自給率を2030年までに50%にしようと計画している。

コバルトリッチクラストからのレアメタル産出の商業化に成功すれば、南鳥島沖ばかりではなく、沖縄トラフや伊豆・小笠原海域の海底熱水鉱床など、国土面積のおよそ12倍にもなる排他的経済水域に眠る資源を活用できる可能性が高まる。日本が資源輸出国になることも夢ではない。

技術面や採算面など、乗り越えなければならない壁はあるが、深海という新たなフロンティアに期待したい。(居)

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