全国の学校で3学期が始まって10日余り経つが、山形県の中学1年生の女子生徒がいじめを苦にして自殺をし、他にも兵庫や長崎、富山でも中高生が自殺を図り、いじめがなかったか捜査が進められている。昨年6月に「いじめ防止対策基本法」が成立したが、いじめ対策はまだまだ緒についたばかりだ。

本法律が成立するきっかけとなったのが、2011年10月、滋賀県大津市の公立中学校で、男子中学生がいじめを苦にして自殺した事件。

この事件では、学校側が発生直後に全校生徒を対象にアンケート調査を行っていた。亡くなった生徒の父親が、そのアンケート結果の開示を求めた際、「第三者に口外しない」との確約書を署名・捺印入りで書かされた上、開示された書類もほとんどが「黒塗り」にされて読めない状態のものだった。

これらの対応によって精神的苦痛を受けたとして、父親は同市に100万円の慰謝料を請求する訴訟を起こしていた。14日、大津地裁は父親の訴えをほぼ認め、「アンケート結果の一切の利用を禁止した確約書は違法で、個人名以外まで不開示とした処置も不適切」であったと、市に30万円の支払いを命じる判決を下した。大津市は控訴しない方針だという。

記者会見をした父親は「いじめに関するアンケートの開示を後押しする画期的な判決。遺族の知る権利にとって大きな第一歩だ」と語った。

「いじめ防止対策基本法」では、重大ないじめに対する調査や警察との連携は強化されることにはなったが、警察への通報基準が学校の判断に任されているなど、いじめの隠蔽につながる恐れが残っている。また、いじめを止めなかった教師への罰則がないのも問題だ。

実際、生徒の父親は、「いじめが自殺の原因」であったとして、同市や加害者とされる生徒らに約7700万円の賠償を求めて提訴、現在係争中だが、事件当時の担任教師や校長・市教委など、学校関係者が直接の責任を問われておらず、大きな疑問を感じる。

いじめ加害者はもちろん、それを見てみぬふりをする教師の「悪」に対しても、「逃げ得」を許さず、処罰も辞さない毅然とした態度で対処しなければ、子供たちの「いじめ自殺」は決してなくならないだろう。(宮)

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