シリアで内戦が続く中、国際テロ組織アルカイダ系の武装集団が、同国やイラクで勢力を拡大している。「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」は4日までに、イラク政府軍との戦闘の末に、イラク中部の都市ファルージャを制圧した。アルカイダ系の組織がイラクの領土を占拠したのは、2011年に米軍が撤退してから初めてのことだ。
治安悪化の懸念もあり、米政府は当初、2万人ほどの米軍を駐留させる意向だったが、現地イラク政府との交渉が不調に終わり、全面撤退せざるを得なかった。その後は、現地政府に対する住民の不満が温床となってアルカイダ系グループが勢力を伸ばし、テロが頻発する事態となっている。
ISILは、シリアでも反体制派としてアサド政権軍と戦い、同国北部などで支配地域を広げている。既存の国境を越えて、イスラム教に基づく国家の建設を目標に掲げるこの組織は、シリアから元々の拠点であるイラクに月30人あまりの自殺テロ犯を送り込み、昨年は8千人以上の犠牲者を出した。最近ではレバノンの首都ベイルートでも爆弾テロ事件を起こしている。
シリア内戦においては、アメリカが優柔不断な対応に終始していることも、この地域でのアルカイダの台頭につながっている。
3年近くに及ぶシリア内戦では10万人以上が犠牲となっており、国連が死者数の確認をあきらめるほどの惨状が続く。米国では、シリア反体制派の穏健派グループに武器支援を行う案が何度も検討されてきたが、オバマ米大統領はこれを先延ばしにしてきた。また昨年には、アサド政権側が化学兵器を使用したことを理由に、オバマ大統領がいったんは反体制派を支援するための軍事介入を表明したが、その後に見送るというどっちつかずの失態を犯した。
その結果、反体制派内では、アルカイダ系グループが力を強め、ISILは他のグループとの内乱も起こしており、アサド政権を転覆させるという反体制派の「大目標」さえ見失われつつある。
ISILが占拠したファルージャは今後、国際テロ組織の温床になりかねないと不安視される。さらに懸念されるのは、米軍が今年末までに撤退を予定しているアフガニスタンで、イラクと同様にテロ組織の再興が起きるのではないかという問題だ。
ブッシュ政権から引き継いだアフガン・イラク戦争を、オバマ大統領は負の遺産と位置づけ、当初から幕引きを図ってきたが、こうした“後ずさり戦略"に対しては批判が尽きない。
ジョン・マケイン米上院議員はISILによるファルージャ制圧を受けて、「アフガンからの全面撤退は、同国をアルカイダの聖域に逆戻りさせかねない」との声明を発表した。また、ブッシュ、オバマ両政権で国防長官を務めたロバート・ゲイツ氏も、近く出版される回顧録で、アフガン戦争について「オバマ大統領にとっては、撤退こそすべてだった」とコメントしている。
アメリカのリーダーシップ不在が続けば、さらにテロ組織が勢力を伸ばし、中東をさらなる混乱に陥れることにつながる。アメリカが「世界の警察官」として復活できるかどうかが、中東情勢を占う鍵を握っている。
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