米欧などと核合意が成立したイランへの制裁緩和が始まったことで、ロシア、フランス、中国がそれぞれの利益を求めて、経済と軍事両面から中東に触手を伸ばしていると、8日付読売新聞が報じている。

アメリカ企業がイランと距離を取るなか、フランスは石油・自動車部門でイラン市場を狙い、ロシアはエジプトに戦闘機を含む最大40億ドル(約4100億円)規模の武器輸出をすると同時に合同訓練も協議している。

さらに、トルコのエルドアン政権は中国企業から防空ミサイルの調達交渉を始めている。シリアの紛争に巻き込まれる危険があるトルコは、アサド体制を事実上容認するアメリカに不信感を募らせており、英誌エコノミストは「(トルコとアメリカの)蜜月は終わった」と伝えている。

こうした状況を踏まえて、同紙はアメリカによる安全保障に空白が生まれ、「アラブの春」から中東にカオス(混沌)が広がっていると報じている。

チュニジアから始まった「アラブの春」は当初、民衆の勝利ともてはやされていたが、大川隆法・幸福の科学グループ創始者兼総裁は2011年2月13日の法話「セルフ・ヘルプと愛国心」(大川隆法著『教育の使命』所収)のなかでいち早く、アメリカの統治能力が衰退し中東が混沌状態に陥ることを指摘していた。

「アメリカという国が、特にオバマ大統領が、親アメリカの国に次々と見放され、かつ、一方では見放しているような状況が続いてきつつあるように感じられてなりません。」という予想通り、長らく親アメリカ政権だったエジプトはロシアに接近し、トルコも中国との交流を深めている。今回のイランへの制裁緩和も、核開発の時間的猶予を与えるだけの結果になるだろう。

さらに大川総裁は同法話のなかで、アメリカの影響力が後退することで、イランに続いてエジプトやサウジアラビアの核開発も進むと予想しており、「この『イスラム教国の三角形』でイスラエルを囲み、包囲殲滅戦が起きる可能性が高まった」と警鐘を鳴らしている。

中東の混沌は決して他人事ではない。アメリカが次々と見放そうとしている「親アメリカの国々」に、日本もまた含まれつつある。中国、韓国、日本を巡る防空識別圏の問題でも、本欄で度々指摘しているようにアメリカの姿勢は融和策に見えなくない。

中東においても東アジアにおいても、アメリカの外交にはもはや、「世界の警察官」として何を目指すのかというビジョンが見えなくなっている。

世界が急速に混沌のなかに陥ろうとしている今、指針にすべきものは「世界教師」の言葉だ。日本をはじめ世界の指導者たちは、覇権主義国家の暴挙や宗教対立の問題をいかに解決するべきかを、大川総裁の示す未来ビジョンに学ぶ時が来ている。(近)

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2013年12月6日付本欄 米中首脳級会談 アメリカは中国に外交的な敗北を喫している

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