バイデン米副大統領が、北京で習近平・中国国家主席と会談した。バイデン氏は、中国が一方的に設けた「防空識別圏(以下、防空圏)」について、「地域の現状を変えようとする試みだ」とアメリカ側の懸念を伝えたとされる。だが氏は、日本が求めていた防空圏の撤回には言及せず、シリア、イランに続き、中国との外交においても「敗北」を喫した印象が拭えない。

5日付各紙によると、会談は予定していた45分を大幅に上回り、約2時間に及んだ。習氏は、「今の世界は不安定で、中米両国は世界の平和と安定を維持する上で、共同の責任を担う」と述べ、バイデン氏は「(米中の協力関係は)信頼に基づくものではなければならない」と応えた(同日付読売新聞)。

世界を不安定にしているのは、20年以上も連続で軍事費を2ケタ増させてきた中国自身ではないかと突っ込みを入れたくなるが、それはさておき、今回注目したいのは、アメリカの対応だ。

そもそも中国は、バイデン氏の訪中が迫っていた11月23日に、突然、防空圏の設定を発表した。これに対し、アメリカは軍用機を飛ばしてけん制したものの、自国の民間航空会社に対しては、中国の主張通り、防空圏を飛ぶ際は、事前に飛行計画を提出するよう促している。

またバイデン氏は、この問題の解決について、日中の間で偶発的な衝突が起きないような仕組みづくりを提案している。だが、もし日本がこの提案に乗ると、中国が一方的に設けた防空圏を認め、それを前提とした話し合いになってしまい、逆に中国を利する形になる。つまり、アメリカは一連の防空圏の問題で、中国に譲歩し続けているのだ。もっと言えば、外交的な敗北を喫している。

ここ数カ月を振り返ってみても、アメリカは9月、11万人が死亡しているシリア内戦への武力介入を避け、「シリアの化学兵器を2014年前半までにすべて廃棄させる」枠組みでロシアと合意。11月には、核開発疑惑があるイランとも、核兵器への転用が容易な濃縮度20%ウランの生産を停止することを柱にした措置で合意。経済制裁を一部緩和することなどを決めた。

だが、シリアについては、自国民を殺し続けるシリアのアサド政権の延命に協力しただけであり、イランについても、核開発の時間的余裕を与えるだけ。いずれも「問題の先送り」であり、外交的な敗北に過ぎない。そして今回の中国への対応もまた、明らかな「敗北」である。

今回、中国は、シリアやイランの問題で弱腰な姿勢を見せたアメリカに対して、バイデン氏訪中直前にあえて防空圏を設定することでアメリカを翻弄したのだろう。中国は自信を深めたに違いない。

その中国の脅威にさらされている日本は、こうした厳しい国際政治の中で、何を為すべきかを真剣に考えなければならない状況に置かれている。集団的自衛権の行使容認や憲法改正は、今すぐにでも実現させなければいけないのは当然である。(格)

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