中国でキリスト教徒が増えている。
現在、政府非公認のキリスト教組織は80万人を超え、中国国内のキリスト教人口は1億人以上との統計もある。
これは共産党員(2012年末時点で約8500万人)をも凌ぐ数であり、この広がりを見ても、人々には本質的に神仏の存在を求めようとする「信仰の本能」があることをうかがわせる。
しかし、共産党は無神論・唯物論を党是としており、党員は信仰を持つことを禁じられる。共産主義の中国と宗教は相容れない。
とはいえ、ここまで膨れ上がった宗教人口をあからさまに抑圧・弾圧することは、国内の治安維持にとってもプラスにならない。そこで、政府の管理下においてのみ、宗教の自由を表向きは認めるという方針が採られ、政府公認の教会などが各地に建てられている。
そうした中国の宗教事情の中、11月19日、大紀元などが報じたところによれば、河南省にある政府公認キリスト教会の牧師とその家族、20数人の信者が公安に拘束され、連行されたという。拘束の理由や、根拠となる法律などは示されず、釈放を要求しても拒絶されたとのことだ。
今までも中国国内では、政府非公認の地下教会の監視と取り締まりが行われ、多くの宗教リーダーが弾圧を受けている。気功を学ぶ平和的な集団だった法輪功も、時の国家主席であった江沢民が、増え続ける信者を脅威に感じて弾圧を命じた。現在では、法輪功の活動は厳密に取り締まられ、ネットで法輪功関連の活動について検索することもできない。
今回の場合は、政府公認教会の牧師が連行されたという点で、より一層、事は深刻である。
文化大革命の時代には、宗教は反共産主義的なものとして徹底的に弾圧を受け、公認教会までも活動を停止させられた。
現在、習近平は毛沢東路線への回帰を強めており、今後、共産主義に反するものとして宗教の取り締まりが強化されることが予想される。政府に公認されていたとしても、ある日突然牧師や信者が拘束され、教会の閉鎖を命じられるようなことが増えてくるかもしれない。
中国には「易姓革命」といって、「天命に基づく革命が起きて政権が倒される」という考えがある。
実際、後漢を倒した「黄巾の乱」は、道教をベースにした新興宗教によるものであり、清朝末期の「義和団の乱」は、仏教系の宗教結社によるものだった。
そのため、中国は宗教勢力の台頭を非常に恐れているのだろう。
しかし、文化大革命によって宗教が弾圧されたときには、逆に政府に公認されない地下教会が爆発的に増えたといわれている。中国政府が宗教を表立って弾圧することは、人権抑圧の最たるものとして世界の笑いものになるだろうし、逆に人々の信仰心が燃え上がり「易姓革命」が近づくかもしれない。
たとえ人々の自由を奪おうとしても、内心の自由まで奪うことはできない。この当たり前の事実に気づき、中国は国民の自由と幸福を尊重する方向に舵を切るべきだ。(佳)
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2012年7月号記事 宗教は、自由を守る最後の砦 - 編集長コラム