米オレゴン州で販売されていた、中国製ハロウィン用品セットの中から出てきた、1通の手紙が去年話題になった。そこに記されていたのが、中国の「労働教養所」に収容された男性による、過酷な労働、虐待、拷問を告発する文だったからだ。
米CNNはこのほど、この手紙を書いた男性を見つけ出し、匿名で取材を行った。男性は、中国での活動を禁じられている宗教団体「法輪功」のメンバー。北京五輪前に拘束され、その後「馬三家労働教養所」に収容されたという。
男性は改宗を迫られたがそれを拒否したため、暴行や眠らせないなどの拷問を受けたことを明らかにした。拷問の詳細は残酷すぎて話せないという。地獄のような状況を訴えるべく、労働教養所で製造していたハロウィン用品に手紙をしのばせたのだ。
同じ教養所の惨状が報告された例は他にもある。収容された経験のある女性の手記などにより、1日20時間働かされ、環境も劣悪で、トイレの時間も決められているといった強制労働の実態がわかっている。看守の命令で同僚に椅子で殴られて意識を失い、目が覚めればまた働かされるといった話もあり、日常的な拷問で死亡者や精神異常者も出ているという。
恐ろしいのは、こうした施設が中国に数百ヶ所もあるということだ。その実態を告発するのはまさに命がけで、見つかればどのような目に遭うかわからない。今回明らかになった虐待・拷問も、氷山の一角でしかない。
中国は世界第2位の経済大国となり、さも先進国であるかのように振舞おうとしている。日本人も、中国との経済交流の中で麻痺してしまうのか、中国に対して「少し問題のある隣国」くらいの認識しか持っていない人も多いのではないのだろうか。
しかし、こうした人権弾圧を、チベットやウイグルなどの他民族のみならず、同じ民族に対しても行っている中国政府が、本質において北朝鮮と何ら変わりはないということを再認識する必要がある。国際世論が、10月末に起きた天安門での車炎上事件を「テロ」とみなすかどうかで揺れている裏で、中国では毎日のように虐待・拷問が行われているのだ。
そうした事実を考えれば、国際社会は中国の人権弾圧を止めさせることに、迷いがあってはならない。また、現体制を解体して中国を民主化・自由化させることも、「自由と民主主義を守る」という理念以前に、人間として当たり前の「人助け」の問題といえる。
手紙を書いた男性は「中国は1つの大きな労働教養所のようなもの」と、中国の現状を表現している。日本も含め国際世論は、こうした国が巨大な経済力・軍事国を持とうとしていることの異常さを再認識しなければならない。(光)
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