中国北京市の天安門前に車が突入・炎上した事件を公安当局が「テロ」と断定した。当局は容疑者5人を拘束し、死亡した3人を合わせた計8人をいずれもウイグル族と見ており、車内にはガソリンや刃物、「聖戦」と書かれた旗などが見つかったという。当局は、新疆ウイグル自治区の分離・独立を目指すグループが関わった組織的犯行と見ており、ウイグル族への取り締まりが厳しくなることが懸念されている。

中国当局は、今回の事件も含め、今年4月以降に相次いで新疆ウイグル自治区で起きているウイグル族グループと地元警察の衝突事件をテロ行為として発表し続けているが、「テロ」という表現はあくまでも体制側である中国当局の側から見た言い分に過ぎない。

この地域はもともとテュルク系遊牧民が多く住み、東トルキスタン共和国として2度に渡り建国が試みられていたが、1949年に中国共産党の侵攻に遭い、1955年に新疆ウイグル自治区に編入された。その後、中国政府による様々な人権弾圧が繰り返されている。

独立を目指すウイグル族の側から見れば、決して「テロ」ではなく、レジスタンス運動、解放運動なのだ。確かに暴力行為そのものを肯定することはできないが、「テロ」という表現は、当局が自らを正当化し、国際世論を味方につけるための言い逃れに過ぎない。

しかし、日本のマスコミ報道は当局の発表をそのまま報道したものが多く、あたかもウイグル族が自治区の治安、秩序を乱し、反社会的な暴動行為を繰り返しているという誤った印象を与えかねない。なかには、「貧困が続いていることへの不満」が事件の発端であるかのような報道さえある。こうした中国側の意向に沿う形での報道は、中国に「報復」の正統性を与え、さらなる民族弾圧を招く遠因になりかねない。

尖閣諸島が中国の軍事的脅威にさらされている日本こそ、ウイグル族の独立を求める行動を正しく理解し、自由と民主主義の価値を世界に発信するべきではないか。

信教の自由、思想の自由、表現の自由などが保障されない国家において、真の幸福はありえない。人間が魂をもった霊的存在であるという普遍的な真理を否定し、人間の自由を尊重しない国家に正義はないのだ。自由を求める行為のなかには、単に体制を守るという正義を超えた、普遍的な価値がある。

この事件の容疑者は、その家族、親類も数多く当局の取り調べを受けることになる。それを承知の上で、今回の行動に出たウイグル族の自由を求める思いは如何ばかりか。日本も国際社会も、中国共産党による人権侵害をいつまでも容認していてはならない。(雅)

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