世界の宗教者が集まる「世界宗教者平和会議」(WCRP)の第9回会合が19日からウィーンで開かれる。会議では、日本の代表団が初めて福島原発事故に言及し、「『原発は安全に管理できる』との思い上がりを反省」など、原発に反対する姿勢を打ち出すという。17日付東京新聞が報じた。

WCRP日本委員会は1972年に発足し、仏教や神道、キリスト教、新宗教に所属する宗教者が参加している。現在の会長は立正佼成会会長の庭野日鑛氏だ。

日本代表の原発に関連する発言は、以下の内容になる。

  • 福島第一原発事故が世界に大きな影響を及ぼしていることを深く受け止め、憂慮する。
  • 「原発は安全に管理できる」との思い上がりを反省し、安心して暮らせるよう宗教者として取り組まなければならない。
  • 核廃棄物の処理方法は依然不明瞭。原発に頼り続けることは将来世代に私たちの生活の後始末を負わせることになる。
  • 日本は唯一の被爆国で、原発事故の放射能汚染も深刻な問題を提起している。核兵器と原子力エネルギーは、「あらゆるいのちを脅かす大きな課題」と深く受け止めなければならない。

声明では、原発を安全に管理できると考えるのは「思い上がり」であり、核兵器も原発もまとめて「あらゆるいのちを脅かす」としており、脱原発のニュアンスが出ている。

こうした主張は、日本の宗教界の、科学に対する知見が十分でないことを示している。

放射能汚染が深刻な問題というが、福島原発事故の放射能漏れで亡くなった人はいない。政府は年間数十ミリシーベルトの放射能で「帰宅困難」としている。しかし、これまでの研究では、年間100ミリシーベルトの放射能による健康への影響は、野菜不足と同程度かそれ以下だということが分かっている。まったく問題のない汚染レベルで騒いでいるというのが現状だ。

また、原発のリスクはメリットと比較検討しなければいけないが、それについての言及がない。

今は原発の代わりに火力発電所を使っているため、化石燃料への依存度が2012年度で9割を超えてしまっている。先の大戦は、日本に対する石油などの禁輸措置が取られたことがきっかけだった。むしろ、輸入燃料に頼らない原発は、日本の平和に役立つといえる。

原子力を超える代替エネルギーが実用化されていない段階で、脱原発を主張するのは無責任であると言わざるを得ない。宗教には、科学技術の発展を認めないような偏狭さがあってはならないし、知見が不十分な分野については、見解を差し控える謙虚さも必要だ。(居)

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