現在、小中学校の正式科目ではない道徳が、早ければ2015年度にも、教科に格上げされることになりそうだ。文部科学省の有識者会議である「道徳教育の充実に関する懇談会」は11日、道徳を数値評価のない「特別な教科」とし、将来的には検定教科書を使用することを記した報告書案を公表した。

道徳は正式科目ではないため、教科書もなく、専門教員もいない。現時点で道徳の授業枠として小中学校ともに年間35時間が設定されているが、道徳の授業の準備は後回しになる教師も多いという。そのため、教科化と検定教科書の導入は、道徳の授業のレベルを上げることにもつながると言われている。

特に検定教科書の使用に対しては、「国による価値観の押し付けという批判を受けかねない」など慎重な見方もあるが、現在道徳の授業で用いられている道徳の副読本の内容を考えれば、道徳教育の中身を見直すことこそ大切であることに気づく。

例えば、道徳の学習指導要領の内容の一つに「自然や崇高なものとのかかわり」が明記されているにもかかわらず、「宗教」や「神仏」に関する記述がない副読本は多い。副読本のこの項目では、童話や偉人伝、自然に関する話が目立っている。

教科書出版社も今後この項目をどう扱えばよいのか頭を悩ませているというが、世界的に善悪の価値判断の基準は宗教が担ってきた。そのため、道徳の授業では、「宗教」や「神仏」について正面から教えるべきではないだろうか。少なくとも、今日の世界宗教である仏教・キリスト教・イスラム教の代表的な教えを紹介することは必要だろう。

また、日本の道徳の副読本は、中立性を重んじているためか、思想や価値観に触れる記述は見受けられない。例えば、本田宗一郎が自動車やオートバイなどものづくりに携わってきたことは書いてあっても、彼がホンダという企業の創始者で、戦後の日本の経済成長に大きく寄与した起業家である側面には触れられていない(『かがやけ みらい 道徳6年』学校図書)。これでは、企業家精神を持った子供を育むのは難しいだろう。

道徳が教科化され、検定教科書が導入されるとしても、その内容が、現在用いられている副読本の延長なら、それはあくまで「制度」改革にすぎない。道徳教育の内容を見直し、正しい価値観を子供たちに教える道徳教育に切り替える必要がある。(飯)

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