原子力発電所を持つ電力会社9社の4~9月期の中間決算が発表され、原発事故があった東京電力を含め5社が黒字となった。すべての原発が停止している中での黒字化達成に、「原発がなくても大丈夫じゃないか」という声も聞こえてきそうだ。だがその実態は、電気料金の値上げという「消費者負担」によるものである。

1日付各紙によると、東電の経常損益は1416億円の黒字となった。その内訳をみると、人件費の削減で183億円、発電所の修繕費の先送りで367億円のプラスを生み出した。だが、黒字化の要因として最も大きかったのは、電気料金の値上げによる1770億円である。つまり、消費者が1770億円分を余計に負担しているということだ。

さらに、福島原発事故の賠償金約3兆円は国が立て替えており、額面上は、経営悪化につながっていないように見える。また、3兆円を超すとも言われている除染費用の一部計上も先送りしていることなどを考えれば、実際の東電は「大赤字」と言えるだろう。

黒字化しているように見せるには訳がある。東電が、金融機関に融資を継続してもらうためには、2014年3月期の決算で黒字化を達成しなければいけない。実質上、国有化された東電は、政府の原子力損害賠償支援機構が後ろ盾になっているが、東電の黒字化達成のために、政府が汗をかいていることは言うまでもないだろう。

一方、原発が再稼働できないために、電力各社の火力発電の需要が急増。経産省の試算によると、電力会社9社の火力発電の燃料費は、震災が起きた2010年度に比べ、13年度は約3.6兆円増えるという。

政府は、原発の再稼働に消極的な姿勢のままだが、それによって、電気料金の値上げで消費者の負担を増し、無理に黒字化を達成しているように見せ、電力各社に燃料費という余計な負担を強いている。

こうした矛盾を解決するためには、原発の再稼働を早めることが近道だろう。再稼働が実現すれば、燃料費が軽減できる一方で電気料金が下がる。さらに、本当は危険ではない地域からの無駄な避難や、必要のない除染などもやめれば、東電の経営も楽になる。政府がやるべきことは、政府自身も分かっているはずではないか。(居)

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