放射線が生みだすミュー粒子を利用して、核テロ対策技術として実用化することを英政府が計画していることが判明した。これまでの技術では発見することが難しかった、貨物の中に隠された核物質も見つけることができるようになるという。5日付産経ネットニュースが報じた。

ミュー粒子は放射線の中の陽子が大気中で崩壊するときに発生する、素粒子の一種。電子と同じ電荷を持ち、電子の200倍ほどの重さを持つ。上空で生まれるミュー粒子の寿命は約50万分の1秒と短いが、光に近い早さで飛び出すので相対性理論によりその寿命が延び、地表まで届く。また、ミュー粒子は物質を通り抜ける性質を持ち、普段から手のひらほどの面積に、毎秒1つの割合で通り抜けている。

ミュー粒子はほとんどの物質をまっすぐ通り抜けるが、ウランやプルトニウムなどの放射性物質を通り抜けるときには進行方向が曲がる。これを利用して核物質を検知し、不法な核取引を摘発するという。

核物質を燃料とする原子力発電は、安定した電力の供給という点で現代社会において重要な役割を果たすものだが、その燃料の管理にはリスクが伴う。国際原子力機関(IAEA)によると、1995年から2012年までの間に、核や放射性物質を巡る窃盗事件などが2200件を超えた。

ミュー粒子を用いた検査法が実用化され、世界に広まれば、核不拡散を徹底する上で強力なツールになる。また、日本でも核物質を利用したテロが計画された場合に税関で見つけられれば、テロを未然に防ぐことにつながる。

イギリスだけでなく、世界中の国々にとっても必要な技術になり、かつ、膨大な予算を必要とする素粒子の研究が実生活に役立ったと実感できるものにもなるだろう。一日も早い実用化が期待される。(居)

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