ロシアがシリアの化学兵器廃棄の仲介役として国際政治の第一線に返り咲いた。オバマ大統領の「迷走」ぶりをフルに活用した結果ともいえよう。
アメリカ議会で限定的武力行使の承認を得られる見込みはないとみたオバマ氏は、「武力行使」の条件など詰めずに勇み足でロシアの提案に乗った。続いてシリアの化学兵器のリスト提出に関してロシアの協力を仰げるのかと思いきや、ロシアは、「国連の査察は、政治的思惑に満ち、むしろ反体制派が使った形跡がある」として、国連に証拠を提出するという。アメリカにとって、ロシアがシリアの化学兵器廃棄に向け責任を持つという考えは全くの希望的観測にすぎなかったことがこの1週間で明らかとなった。
プーチン氏の意図は何か。それはアメリカの一極支配の拒否と「大国ロシアの復活」である。
それゆえ、共和党の大御所マケイン氏が9月19日付で露紙プラウダに「ロシア国民はプーチンよりもすばらしい大統領に恵まれるべき」という趣旨で、米ニューヨーク・タイムズ紙に掲載された9月12日のプーチン氏の記事に対する反論記事を書いているが、ロシアの権威を失墜させるような形では、プーチン氏が批判を受け入れることはないであろう。
ロシアの台所事情を振り返ってみると、最近では資源頼みの経済が低迷。汚職も蔓延、中国の台頭で国際社会の存在感も弱まって、ロシア軍内部では旧ソ連時代からの対米強硬論が勢いを増していた。求心力が課題であるロシアにとって米国の対シリア攻撃だけは許しがたい。
19日、プーチン大統領は、2018年の再出馬の可能性を示した。再選されれば、2024年まで合わせて4期務めることになる。同日のロシア国民に向けての演説では「主権、独立、統合こそロシアにとって誰も踏み越えることが許されない一線(red line)だ」と述べた。また同演説のなかで同性愛問題に触れ、ロシアが欧米的価値観に流され同性愛を肯定するのはロシア正教の価値観に反するとし、保守回帰で国をまとめあげる強い意志を方針として示している。
ロシアは、経済的にも極東にシフトしつつあるが、価値観的にも「脱欧入亜」しようとしているかのようだ。
一連の米ロの対立を「冷戦」ととらえて報じる欧米メディアも増えてきた。プーチン大統領が守護霊インタビューで述べていたように(『ロシア・プーチン新大統領と帝国の未来』)、米ロが直接的な敵にならないように日本がどこまで「米露のかすがい」になれるか、これからが勝負である。(華)
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