消費増税に有利な数字がまた一つ整ってしまった。

内閣府が9日に発表した4~6月期GDP(国内総生産)の改定値が実質で年率換算3.8%増と、速報値の2.6%から上方修正となった。速報値の段階でマイナスだった企業の設備投資がプラスに転じたことが大きかった。

また、名目GDPも年率換算3.7%増で速報値の2.9%から上方修正となった。

消費増税法案では、附則18条のいわゆる景気弾力条項で「名目で3%、実質で2%」の経済成長を目指すための政策の実施が必要とされている。

今回のGDPの改定値はこの数字をクリアしており、消費増税に向けて弾みがついた形だ。

東京五輪の決定で特需も見込まれるため、甘利明経済財政担当相も増税判断に「いい材料が加わった」と述べている。

しかし、本来の景気弾力条項がいう名目3%、実質2%とは、あくまでも2011年度から2020年度までの「平均」である。増税の実施自体が景気を押し下げるため、一時的に数字が好転したからといって単純な楽観論は戒めるべきだ。

このままでは、東京五輪というアクセルと、消費増税というブレーキを同時に踏むことになり、効果は相殺され、日本経済という車は傷む可能性が高い。

二兎を追う者は一兎も得ず。兎は各個撃破で一兎ずつ追うべきだ。まずは景気回復。ついで社会保障。この方が着実だ。

増税をせずに五輪の特需で景気が浮揚すれば、かなりの自然税収の増加が見込める。自然増収がこれほど確実な特需はそうない。

つまり、五輪決定は増税のチャンスではなく、増税中止の稀有なチャンスである。

「増税しなければ税収は増えない」という思い込みを今こそ取るべきだろう。(村)

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