財務省が2日に発表した企業の「設備投資」が改善した。このため、政府が9日に正式発表する4月~6月期GDP改定値は、8月に発表されたGDP速報値(実質2.6%)を大きく上回ると見られている。

改定値は、安倍普三首相が消費税率を上げるか否かを判断する重要材料となる。「これで日本経済は消費増税に耐えられる」と、増税判断への追い風になると見る向きもあるが、結論は逆だ。現在、高成長が可能なら、増税はむしろ不要と判断すべきだろう。

たとえば、高橋洋一・嘉悦大学教授は、名目GDP成長率が約5%以上なら、政府がお金を使う「歳出」よりも「税収」が増え、財政赤字が減ると主張している。9日の正式発表を前に、民間シンクタンク8社は、成長率を名目3.3~5.5%と予測。増税せずに財政を黒字化できる可能性が出てきた。「増税やむなし」という議論の中には、「そのような高成長は不可能」という意見もあったが、今回の数値は、それらの指摘を否定する材料だ。

加えて、アベノミクスが功を奏したのか、実際の税収も増えている。2012年度の税収は43兆9000億円と4年ぶりの高水準だった。今年度はさらにそれを上回ると見られている上、7月の税収が前年比で5%増となったと発表されている。

ただ今回、設備投資が回復したものの、製造業に限っては投資額が減り続けている。すでに企業が増税後の不況に備えているからだ。

消費増税を凍結すれば、そうした不安は解消され、投資はさらに活発化するだろう。金融緩和も各種の成長戦略も、実行後、効果が現れるのはもう少し時間がかかる。もちろん、成長戦略に関しては、宇宙や防衛産業などへの、より大胆な投資を行うべきだ。

こうしたことを考えれば、「国民が豊かになる結果としての税収増」というシナリオは充分可能だ。ただし、それは消費増税が無ければ、の話。消費増税は、国民の財布の紐を固くし、景気回復による税収増の可能性を殺してしまう。

財政赤字の原因は、低い税率にあるのではなく、経済成長が不十分だからだ。経済が回復基調にある今だからこそ、ブレーキを踏んではいけない。(光)

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