政府は、消費増税の影響などについて有識者からヒアリングをする「集中点検会合」を終えた。有識者の8割が増税容認であったが、一方の世論では慎重論が強まっている。31日付読売新聞社説では特にその傾向が現れており、来年春の消費増税引き上げ延期を主張している。

理由は景気や税収へのダメージだ。「アベノミクスの好循環が実現していない」と景気回復の弱さを指摘した上で、「増税で景気が失速すれば、法人税や所得税などの税収も期待したほど増えない恐れがある。それではかえって財政健全化が遠のく」と懸念を表した。

今まで読売新聞は日本経済新聞などと並び、積極的に増税賛成を主張してきた。野田政権下で増税法案が可決した昨年も「すべての世代が負担を分かち合う消費税で財源を賄わないと、欧州のような財政危機さえ現実味を帯びてくる」(1月5日付社説) や「安定財源である消費税の税率引き上げは避けて通れない道である」(3月31日付社説)といった増税賛成の議論を展開してきた。しかし、13日付社説で「消費増税に耐えられる体力か」と増税慎重論をちらつかせ、この度の社説ではっきりと「増税延期」へと舵を切った。

国民も増税に対して冷静に見ている。8月に各紙が行った世論調査でも「予定どおり増税するべきだ」と答えた人は全体の20パーセントを切った。生活が楽にならないという庶民感覚には、財務省やその御用学者のいかなる論理も通用しない。

アベノミクスの効果は出始めているものの、雇用や賃金など実体経済への影響は限定的だ。ここで消費増税をすれば、それこそ日本経済は立ち直れなくなる。金融緩和で景気が上向きつつあったイギリスでは、2011年に消費税に当たる付加価値税の税率を上げた。結果、景気も税収も落ち込んだ。イングランド銀行の莫大な金融緩和も虚しく、GDP成長率は低下の一途をたどっている。アベノミクスの金融緩和効果も、消費増税のデフレ圧力の前ではたちまち吹き飛んでしまう。

判断が近づけば近づくほど、消費増税の破壊力は明白になってきている。安倍首相はそのことを重く受け止め、消費増税中止の決断をするべきだ。(光)

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