自民党が7月の参院選で掲げる公約の中に、原子力発電所の再稼働を明記する方針を固めたことを、12日付各紙が報じた。しかし、再稼働の判断については、原発を動かすことに消極的な原子力規制委員会(以下、規制委)に委ねるような形となっており、動かしても動かさなくても言い訳ができる余地を残している点で無責任に映る。

同日付読売によると、自民党が、公約として掲げる「J-ファイル」の原案では、原発の再稼働について、規制委が安全と判断した原発は、地元の理解を得つつ国が責任を持って再稼働を行う、と明記しているという。公約に原発再稼働を進める意思を示すことは評価できるが、福島第一原発の事故から2年以上経ってから、ようやく推進を唱え始めるようでは、判断があまりにも遅すぎる。

これに対し、宗教政党「幸福実現党」は、原発事故後の2011年5月、当時の菅直人首相が、中部電力・浜岡原発の「運転停止要請」を発表した際に、経済と国防の観点から原発の必要性を論じる、次のような緊急声明を出していた。

「ドミノ式に電力不足が日本列島を覆い、経済活動への影響は深刻なものになる。これは日本経済を沈没させる『菅』製不況そのものである」「菅首相による代替エネルギー不在の原発削減政策は、わが国のエネルギー安全保障を自ら危機に陥れるものである」

この迅速な判断と比べると、自民党は見劣りする。さらに、「原子力規制委員会が安全と判断した原発は……」という形で、規制委の判断が出るまでは主導的に判断しないと言い逃れできる余地も残している。

だが、一連の「活断層」騒ぎでも分かるように、規制委は原発の再稼働には極めて消極的な組織である。また、規制委には高い独立性が与えられており、政治判断に左右されないような仕組みになっているが、こうした強い権限を持たせたのは、当時の民主党政権と共に、法案作成に深くかかわった野党時代の自民党の責任も大きい。

2012年の貿易赤字は約7兆円に及んでいるが、これは石油などの燃料の輸入が大幅に増えた影響であり、この過程では、全国で電気代が値上げされるなどして、多くの国民や企業が苦しんできた。

今回の参院選で、自民党が、本当に「原発再稼働」を目指すのであれば、国民に対して、事故後に原発を強く推進してこなかったことの不明を詫びるとともに、規制委の権限を見直し、国家のエネルギー戦略に対しては、政治家が責任をとることを明言すべきだろう。(居)

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2013年5月7日付本欄 安倍政権「原発外交」 それならば国内でも再稼働・新設を進めよ

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2013年5月号本誌記事 「福島は安全だ 今すぐ我が家に帰ろう ―反原発にだまされるな―

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5792