米国防総省の情報機関である国防情報局(DIA)が、北朝鮮が弾道ミサイルに積めるだけの核弾頭の小型化に成功した可能性があると、分析していることが分かった。アメリカはこのほど、グアムへのミサイル防衛システムの配備を前倒しするなど、北朝鮮の核・ミサイル開発を先回りする形での国防強化を急いでいる。こうした動きの背景には、北朝鮮の核開発が速いペースで進展しているという判断があるのかもしれない。
この分析を盛り込んだレポートの存在は、11日の下院軍事委員会の出席議員が明らかにしたもの。政府関係者は火消しに追われた。クラッパー情報長官は同日の声明で、この分析は16ある情報機関の統一見解ではないとし、「北朝鮮は、核搭載ミサイル(の実用化)に必要なすべての能力を示したわけではない」と述べている。
しかし、北朝鮮による核開発は、看過できないレベルまで進捗していると見られる。今年2月の北朝鮮による3度目の核実験後に、北朝鮮問題に詳しい韓国・延世大学の武貞秀士教授は、「ノドンミサイルの弾頭小型化は終えているのだろう。今回は長距離弾道ミサイル『テポドン2号』の弾頭化のための実験であろう」という判断を示している(2月15日付日経新聞)。
ノドンは日本全土を射程に収める弾道ミサイルだ。もし北朝鮮がノドンに核弾頭を搭載できるのであれば、日本はすでに北朝鮮の核の脅威の下に置かれていることになる。また、このまま北朝鮮の核開発を放置していれば、近く米本土さえも、核ミサイルによって脅かされることになる。
北朝鮮が恫喝によってアメリカを交渉に引き出す腹づもりである以上、北朝鮮との対話という選択肢はないはずだが、気がかりなのは、ここにきて出てきている融和ムードだ。韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は与党議員との11日の会食で、「北朝鮮と対話する」と発言した。朴大統領は、経済援助も念頭に、対話を通じた北朝鮮との友好関係構築を目指す「韓半島信頼プロセス」を掲げているが、これについても「状況は難しくても進めなければならない」と述べている。
しかし、政治的迫害と飢餓を自国民に強いながら、核兵器の"火遊び"に大金をつぎ込む北朝鮮のような"鬼畜国家"にかしずくのは、「奴隷の平和」を求める愚行と言える。
1994年にアメリカが北朝鮮の核施設への空爆を検討した際にも、韓国側は北の反撃による被害を恐れてアメリカ側に泣きつき、計画を中止させた。しかし、経済援助を含めたその後の米韓の融和路線は、北の体制を延命させ、北朝鮮による核の脅威を肥大化させるだけに終わった。今ここで再び米韓が北朝鮮との対話に転じ、体制温存に手を貸すなら、北朝鮮は核開発を着々と進め、やがてアメリカさえも脅かす核を持つだろう。そこに待っているのは、東アジアの国々が北の核の下に屈服するという最悪の未来だ。
オバマ米大統領は北朝鮮問題について公式に自らコメントするのを避け、もっぱらケリー国務長官やヘーゲル国防長官に対応を任せている。だが「世界の警察官」たるアメリカの大統領なら、世界平和を脅かす危険国家の問題について、自ら責任を持つべきではないか。
ケリー長官は12日からアジア外遊を開始し、韓国、中国、日本の順に訪問する。韓国と日本では、同盟国の防衛に万全を期すと表明するものと見られる。しかし、真に長期的な視点で同盟国の防衛と地域の安定を考えるならば、アメリカが北朝鮮の解体に乗り出すことこそ求められる。
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