オバマ米大統領は12日夜(日本時間13日午前)、議会での一般教書演説を行った。最低賃金の引き上げや地球温暖化対策、インフラ改修、教育支援などのリベラル政策を並べ、社会改革を進める姿勢を示した。だが、演説の中で際立ったのは、核開発を進める北朝鮮とイランに対する姿勢の違いである。

オバマ大統領は3度目の核実験を行った北朝鮮について、「昨夜のような挑発は、国の孤立を深めるだけだ。我々は同盟国と協調し、ミサイル防衛を強化し、脅威に対する確固たる対応で世界をリードする」と述べた。しかし、賛同の拍手はなく、議場内は水を打ったように静かだった。

かたや、イランについて「核兵器を持たせないために必要なあらゆる措置を取る」と述べたシーンでは、議員らがスタンディング・オベーションの誘い、極めて対照的な光景となった。だが、北朝鮮とイラン両国の核開発の進捗具合を考えれば、「核開発を許さない」と強気で臨むべきは北朝鮮に対してのはずである。

イランはまだ核燃料の濃縮を進めている段階で、核兵器に使えるレベルまでは至っていない。対する北朝鮮は核兵器の製造に成功して、すでに3回にわたる実験に及んでいる。昨年12月のミサイル実験で大陸間弾道弾(ICBM)の開発に弾みをつけており、核兵器の小型化に成功すれば、近いうちに米本土を直接脅かす存在となる。それを踏まえれば、オバマ大統領の演説のトーンは、あまりにも危機感がなさすぎると言える。

「ソウルを火の海にする」と言ってはばからず、アメリカと「全面対決戦」を行うと宣言している北朝鮮が、アメリカを核で脅せるようになる日が迫っているということを真剣にとらえなければならない。専門家の間では、いまだに対話を行うべきという声もあるが、「向こうは援助や体制の保障を引き出したいだけだ」という甘い幻想で譲歩に出れば、ナチスのヨーロッパ蹂躙を許した宥和政策の二の舞になりかねない。

北朝鮮では、軍への配給のために農作物を収奪したため、農民が人肉を食べなければ生きていけないほどの飢餓が起きている地方もあると言われる。国民を犠牲にして指導者ばかりが肥え太り、挙句の果てには大量破壊兵器で諸外国の国民を生命の危険に置くような国家体制が、神の目から見て許されるはずがない。

「圧政を葬り去り、苦しむ北朝鮮の国民を解放することこそ、我らの人道的使命である」――。これこそ、オバマ大統領が宣言すべきことではないか。

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