日立製作所は30日、イギリスの原子力発電事業会社のホライズン・ニュークリア・パワーを6億7千万ポンド(約850億円)で買収すると発表した。

日立はホライズン社の計画を継いで、イギリスで130万キロワットの原発を4~6基建設し、1基目を2020年代前半に稼働させる予定。日立が世界で唯一稼働実績を持つ第3世代の原子炉である、改良型沸騰水型原子炉(ABWR)を建設する見込み。

今年3月に、ホライズン社の株主であるドイツのRWEとイーオンが売却を発表した。RWEは欧州の経済危機により建設のための資金が集まりにくくなったことと、福島原発事故後にドイツが脱原発を表明したため、同社の収益が悪化したことを理由に挙げている。買収先には中国の国営企業も候補に上ったが、イギリス政府が警戒感を示し、日立に打診してきたという。

イギリス政府は原子力をエネルギー政策の中心に据えており、古い石炭火力発電所などを原発に置き換える計画を持っている。イギリスは現在、全発電量の約2割を原発で賄っており、老朽化した原発の建替需要も予想される。

福島第一原発事故の影響でドイツの脱原発表明など、世界の原発事業が後退しているかのような印象を受けるが、実際は今後も、中国やインド、中東、東欧など新興国を中心に需要は伸び続けるという。昨秋の国際原子力機関(IAEA)の予測によると、2030年に、世界の原発発電量は2011年実績の最大1.8倍になる見込みだ。

そんな中、世界最高の原発技術を誇る日本の3社のうち、日立は今回のイギリスのほか、ポーランドでの受注も目指している。東芝は来年には中国で建設した原発が稼働するほか、今年から米国で新規建設に取り掛かかっており、そのほかトルコやベトナムでの受注活動を活発に行っている。また、三菱重工はヨルダンやフィンランドでの受注を目指している。

一方で中国やロシアは自国内に大きな需要をもち、強い原発推進の姿勢を示している。国内での原発の新設が滞っている日本は、海外に積極的に出て行かなければ、原発技術の主導権を他国に奪われる恐れもある。日本は「フクシマ」の原発被害が死者を一人も出していないことを内外にPRし、日本の原発技術が世界一であることの証明だと誇りをもって伝えるべきだ。(居)

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2012年6月号記事 軽薄短小から重厚長大へ - 弱電の凋落で日本の製造業は沈むか - Newsダイジェスト

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