福島第一原発の事故により中断していた大間原発(青森県大間町)の建設工事の再開を1日、Jパワー(電源開発)が発表した。事故後、原発の建設再開は初めて。政府は「2030年代の原発ゼロ」を目標としているが、着工済みの原発については建設継続を許し、事実上「原発ゼロ」ではなくなりつつある。2日付各紙が報じた。

大間原発は、使用済み核燃料を再処理して作る、ウランとプルトニウムを混ぜたMOX燃料だけを使用する「フルMOX原発」で、世界初の商業炉となる。すでに日本にはプルトニウムが約24トンあり、またプルトニウムは核兵器に転用できることから、その平和的な利用先として大間原発が注目されていた。

同原発は2008年に着工し、工事が4割まで進んでいたが、1年半の工事の中断の影響で完成が2018年6月以降にずれ込む見込み。その使用済み核燃料プールは20年で満杯となるため、新しい保管先が見つからなければ2030年代に運転停止となる可能性があるが、Jパワーの北村雅良社長は1日の記者会見で「原則40年間動かせるようベストを尽くしたい」と発言。同原発での使用済み核燃料の保管先が見つかれば、2050年代以降まで運転が可能となる。

これにより、政府の言う「2030年代の原発ゼロ」は事実上、骨抜きにされようとしている。大間原発の工事再開によって、現在建設中で中断している2基も、さらに計画中の11基も建設されれば、「脱原発」は掛け声だけで終わる。野田佳彦首相お得意の「のらりくらり」戦術だろう。

9月25日にも首相官邸前で「政府に原発推進を求める集会」が開催され、1000人超が参加した。国民の意思は脱原発一色ではない。弊誌が主張し続けてきたように、核抑止力やエネルギー確保の視点から、日本が今置かれている状況をつぶさに見れば、原発が日本になくてはならないことは自明である。

政府は早急に「2030年代の原発ゼロ」を撤回し、堂々と「原発推進」に舵を切るべきである。野田首相は、そこにこそ「政治生命を懸ける」べきだろう。(居)

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