国際的なハッキング集団「アノニマス」が6月下旬に、日本の財務省や民主党、自民党などのサイトを攻撃し、内容を書き換えられるなどしたことは本欄でも報じた。これを受けて、政府は4日、今後1年間のサイバー攻撃対策の基本方針を、情報セキュリティ政策会議で決定した。同日付MSN産経ニュース(ネット)などが報じた。
記事によると、基本方針は、機能が停止することによって日本社会が混乱に陥る原発、電力、ガス、通信などの重要インフラや、国の重要情報を扱う企業の防衛強化が柱。政府は、各事業者と協力して各制御システムに対する攻撃を想定した演習を計画している。
政府が国際的なサイバーテロに対して動き出した点は評価できるが、海外の状況を見渡すと心もとない。
たとえば、中国では、人民解放軍の広州軍区に「ネット藍軍」と呼ばれるサイバー部隊がある。昨年5月、部隊の創設を公表した際、中国国防部は「これはハッカー集団ではなく、ネット防衛訓練機関」と説明しているが、そのまま受け止めることはできない。
ネット藍軍は5万人規模とも言われており、今年3月には、イギリスの防衛産業大手のコンピュータから、米国と共に開発を進めている最新鋭ステルス戦闘機F35のデータが盗まれ、これに中国の情報機関が関与していたと報じられた。
また、中国政府は外国の情報を集めるために、サイバー攻撃を民間のハッカーに委託したり、ネット上の世論を中国政府に好意的な方向に誘導する人の数は30万人にも及んでいるという指摘もある。
2007年9月に、イスラエルがシリアの原子炉を空爆した際には、直前のサイバー攻撃によってシリアのレーダーなどの防空システムが無力化されてしまった。サイバー攻撃への防御態勢の構築は、国防問題なのである。日本政府は、国民を守るために、急ピッチでサイバー対策を強化すべきだ。(徳)
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