日本国内で脱原発を唱える人々やマスコミは、中国のこの動きには反対の声を上げないのか? 中国政府は、昨年3月の福島第一原発の事故を受けて凍結してきた新設の原発プロジェクトを、月内にも再開する見通しとなった。SankeiBizなどが伝えている。

中国では現在15基の原発が稼動中だが、近く発表される2020年までの中長期計画では、建設中の26基を含め60基近い原発を沿岸部や内陸部で建設する方針を打ち出すという。建設工事による雇用拡大など経済効果のアピールも狙いと見られている。

一方、韓国では現在原発3基が整備に入っており、この夏の電力不足や大停電が懸念されているが、「全面中止した日本に見習い、原発を廃止せよ」との主張が出ている。中央日報日本語版(電子版)は11日付で、韓国原子力文化財団の「代案のない原発廃止論は、国に大きな経済的打撃を与えるおそれがある」とのコメントを伝えている。

日本では、野田首相が8日に大飯原発を再稼動する判断を示したものの、他の原発再稼動の見通しはたっていない。そんな中で9日付フジサンケイビジネスアイは、東芝が原発部品の中国現地工場を8日に稼動開始したと伝えている。この工場は、原発燃料の被覆管に使うジルコニウムスポンジを生産するもので、今後ベトナムやブラジルなど新興国を中心に原発の新設が続くことを見込んで稼動開始したという。

このように中国や新興諸国は、現実的なエネルギー政策や経済的観点から、日本の技術も用いて原発を増やそうとしている。そんな中で日本が脱原発を進めれば、エネルギー安全保障の面からも、エネルギーのコストからくる経済的競争力の面からも、自衛のための核兵器研究の観点からも、国際社会で大きく力を落としてしまう。

安全性などを理由に日本の脱原発を主張する人々は、中国の原発新設計画にもノーを唱えるべきだ。それをしないなら、彼らの脱原発論は日本を没落させようとの意図から来ると疑われても仕方がない。(司)

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2012年6月9日付本欄 大飯原発再稼動へ 常に判断を間違う民主党政権では日本が危ない

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=4414

2011年7月号記事 原発を救え! Part2 原子力発電は本当に危険か?

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=2047