民主化を求める学生が装甲車にひき殺されるなどして犠牲になった、1989年の天安門事件から4日で23年目を迎えた。しかし、中国国内では、合同で墓参りをしようとした犠牲者の遺族が拘束されるなど、「自由」が奪われている実態が浮き彫りになっている。

天安門事件とは、1989年4月に胡耀邦・元中国共産党総書記が死去したことを受け、学生らが開いた追悼集会などが民主化要求運動に発展。同年6月4日、中国政府が軍を投入して、装甲車や銃などでデモ隊を武力鎮圧した事件。死者は、数百人とも数千人とも言われている。

5日付の各紙は、23年目を迎えた中国の現状を次のように伝えている。以下は、要旨。

  • 中国外務省の報道官が、天安門事件について、「すでに党・政府は政治的結論を出している」と述べ、「反革命暴乱」だったとする公式の評価に変更がないことを強調した。(読売)
  • 5月末に貴州省貴陽で、天安門事件の追悼集会を開いた男性が、地元当局に拘束された。また、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」では、「6月4日」「広場」「民主」「天安門」「戦車」などの単語の検索ができなくなった。当局が管理を厳格化しているとみられる。(朝日)
  • 事件当時、17歳の息子を亡くした母親が慰霊のために北京中心部を訪れようとしたが、昨年同様、5月末に当局の担当者が現れ、外出を禁止され、電話も一時、遮断された。(日経)
  • 中国当局は天安門広場に警官を動員し、市民が撮影した写真を点検するなどの厳しい監視態勢を敷いた。犠牲者が埋葬された北京市内の墓地に向かった遺族数人が当局に一時拘束され、合同の墓参は許されなかった。(毎日)
  • 複数の民主活動家は、5月末から「療養」という名目で北京郊外に連行されている。(産経)
  • 事件で銃撃を受け、左足を失った人権活動家の男性は5月末、電話取材に「数カ月前から監視が続いており、外出もままならない」と答えた。(東京)

中国に返還された香港では、追悼集会に18万人が集まったが、その香港でも、当局の監視が強まっており、次第に自由が失われつつあるという。

日本では、今月2日から、映画「ファイナル・ジャッジメント」が全国公開となったが、そこでは、日本が軍事独裁国家に侵略され、信教の自由や言論の自由など、あらゆる自由が奪われていく姿が描かれている。天安門事件から23年が経った今、日本人は改めて「自由」の価値を問い直すべきだろう。(格)

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2012年5月26日付本欄 「盲目」なのは中国政府 人権活動家・陳氏が米メディア出演

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映画「ファイナル・ジャッジメント」特設サイト

http://www.the-liberty.com/fj/