2012年7月号記事
ワシントン発
バランス・オブ・パワーで読み解く
伊藤貫のワールド・ウォッチ
(いとう・かん)
国際政治アナリスト。1953年生まれ。東京大学経済学部卒。米コーネル大学でアメリカ政治史・国際関係論を学び、ビジネス・コンサルティング会社で国際政治・金融アナリストとして勤務。著書は『中国の核戦力に日本は屈服する』(小学館)、『自滅するアメリカ帝国』(文春新書)など。
国際政治はバランス・オブ・パワー(勢力均衡)から逃れることはできない。アメリカの退潮、中国の台頭、北朝鮮の核武装──。日本の置かれた立場は確実に不利に傾いている。日本が主体的にパワー・バランスをつくり出すために、国際情勢をどう読み解けばいいのか。
第3回
EUはつまらない内輪もめばかりの組織になった
──フランス大統領選、ギリシャ総選挙でEU(ヨーロッパ共同体)自体が混乱しています。
フランス、オランダ、ギリシャで、緊縮財政を実行しようとした政府が政権を失いました。特にギリシャでは国民の3分の2が、EUが押し付けてきた厳しい緊縮財政を拒絶する選挙結果となりました。財政削減をやりすぎたイギリスは二度目の不況に突入してしまったし、スペインの失業率は何と25%です。これは1930年代の大恐慌を思わせる数字です。